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だから、自分が合格する可能性など0に等しいだろう。
受験するにも多大な金額が必要となる。もう祖母に迷惑は掛けられないのだ。
「とは言っても、バトルはやっぱりしたくなるよなぁ」
ベットから立ち上がり、机の上にあったデスティニーガンダムを手に取る。もう正月も終わって数日。
そこら変のゲームセンターや、模型店に行けばバトルシステムは使えるだろう。やるとこもないし、定時制高校だろうとさすがに三学期が始まればそれなりの勉強をしなくてはならない。ならば、思いっきりバトれるのもこの時期が最後だろう。だとしたら、いまのうちに楽しんでおくとしよう。
クローゼットから取り出した適当な服に着替え、デスティニーガンダムを専用のケースに入れて階段を降りて行った。
「婆さん、俺ちょっと出かけてくるから、なんかあったら連絡して」
「はいよ〜。気をつけてね〜」
ガラガラと玄関を開け、いつもの通りへと歩いていく。ごく普通の商店街の通りは相変わらず平常運行で、特に変わりはない。
強いて変わっているところを探すとしたら、電気屋にある大型テレビから流れている映像だろうか。
『本日のゲストは、人気急上昇中の新人歌手、ヒラガオカ・チサキさんです』
流れているのは、年末年始によく放送される長寿番組の特番。テレビでよく見る初老の男と、それとは対照的な若く美しい少女が話している。
紫がかった長い髪を頭の横で纏めている。俗に言うサイドテールというやつだ。目は綺麗な空色。スタイルは少女とは思えないほどグラマラスなもので、それも彼女の人気のひとつなのだろう。
「へぇ、最近人気なんだなこの人」
人気だとしても、アラタは全くと言っていいほど知らない。テレビはあるが、未だにブラウン管、しかも見るとしてもガンプラバトルの中継か、ニュースぐらいしか見ていない。あまり興味がなかった為に、今の中学ではあまり友人もいないし、彼女の歌も聞いたことがない。
『最近はどう?学校には行けてるの?』
『そうですね。仕事の合間を縫って行けるようにはしてます。やっぱり、学校は楽しいので』
『あれ、確か中高一貫だったよね?』
『はい。だから、頑張らないと進級できないかもしれないので』
そう言って笑っている彼女は、とても自分と同い年の女の子には見えない。きっと数々の修羅場を経験してきているのだろう。
『それでは、聞いていただきましょう。ヒラガオカ・チサキさんで、“オラシオン”です』
司会者が進めていくと、スポットライトが移動した彼女の元に集まり、ヒラガオカ・チサキのステージが始まる。
寒さに体が堪えてきたアラタは、そのステージが気になりながらも電気屋から立ち去り、行きつけの模型店へと向かっていった。
商店街の通りには、数多くの人が集まる。老若男女
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