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IS インフィニット・ストラトス〜普通と平和を目指した果てに…………〜
number-34
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間帯になってきた頃、ふと箒が姉である束の姿が見えないことに気付く。どうやら周りにいた人も集中していたせいか全く気付いていないみたいだった。
 いつもなら気にも留めないことなのだが、姉と一緒の空間にいるという自分の中では普通ではなくなっていた今の状態が、彼女に姉の姿を探しに行くという手段を取らせた。


 果たして、姉の姿はすぐに見つかった。台所で機嫌よく口ずさんで何かを握っていた。近くのテーブルにはお皿の上におにぎりが綺麗に握られて並んでいる。


「……姉さん?」
「……ん? おー箒ちゃん、どうしたの?」
「……いや、別にどこにいるかなって…………それにしても姉さんって料理できるんですか?」
「出来るよー。そんなにレパートリーは多くないけどね、作れるよ」


 箒は初めて見た姉の姿に困惑しながらも、束が作ったおにぎりの味が気になってお皿から一つとって口に運んだ。


「――――!」


 美味しかった。それも自分が作るおにぎりよりも美味しいと感じたのだ。
 特に特別なものを使っているわけでもなく、普通の炊飯器で炊いたご飯にスーパーで買った梅干を入れているだけなのにとてもおいしかった。


「あっ、つまみ食いしたなっ、美味しい?」
「は、はい、とても」
「束さんが作ったからね、美味しんだよきっと。……そうだ! ねえ、箒ちゃん」
「何ですか?」
「これと麦茶を外で頑張ってるれんくんたちに届けて来てね!」
「は、はあ」
「じゃ、よろしくぅ。私はこのままお昼の準備しちゃうから」


 お皿に乗せられた四つのおにぎりとコップ二つの麦茶を何時の間にかお盆に乗せて箒に渡した束。あまりにもいきなりのことで、呆けている間に束は作業に取り掛かってしまった。
 了承することも断ることも出来なかったが、渡されてしまった手前、このままにしておくのは後ろめたかったためお盆を手に取り、玄関に向かった。


 玄関から家の後ろ側に回り込むと所々に山になった雑草に二人の姿を少し隠しながら黙々と作業していた。
 声をかけることも憚れたが、麦茶が冷たいうちにと声をかける。


「姉さんからの差し入れを持ってきたぞ」
「ん? おっ、サンキュー箒。助かるぜ」
「…………」


 一夏からは感謝を蓮からは無言を返され、何とも言えない気分になったが、うまそうに麦茶を飲む一夏を見てそんなのはどこかに行ってしまった。
 蓮も麦茶を一息で飲むとおにぎりを一つあっという間に食べてしまい、もう一つは手に持って作業に戻って行った。


 一夏は箒にこのおにぎりを作ったのが束であることを知らされて驚いていたが、蓮は何の反応も示さなかった。すでに知っていたのもあるが、一番は蓮が一夏と箒が作る空気から孤立しているからだった
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