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誰かを傷付け
5部分:第五章

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第五章

 食べ終わって教室に戻る。やはり彼女に声をかける者はいない。時折冷たい視線が一瞬だけ向けられるだけである。しかし彼女は今向かうのだった。
 香里奈は丁度クラスの皆と弁当を食べていた。その彼女の前に来てそれで。すぐに頭を下げたのだった。
「御免なさい・・・・・・」
 こう言って謝るのだった。
「あの時は。御免なさい」
「あの時って」
「私が貴女のこと考えてなくて。御免なさい」
 頭を下げ続けたまま謝るのだった。
「貴女を傷付けてしまって」
「あの時ね」
「貴女を傷付けたことがわからなくて。御免なさい」
「彩夏も傷付いたわよね」
 香里奈はその頭を下げる彼女に対してまずはこう言ってきたのだった。
「ずっと一人になってたわよね」
 そのことは彼女も見ていた。だからこその言葉だった。
「一人だったわよね」
「一人・・・・・・」
「傷付いたわよね」
 こう彼女のことを思うのであった。
「傷付いたから。だからいいわ」
 そして次に言った言葉はこれだった。
「顔。あげて」
「顔を・・・・・・」
「もう。いいから」
 香里奈の声は温かいものになっていた。
「もうね。謝らなくていいから」
 そして次に出した言葉もあった。
「貴女も辛い思いしたし」
「私も・・・・・・」
「もうお昼食べた?」
 顔をあげた彩夏に対して問うた言葉だった。
「お昼は。どうなの」
「ええ。食べたけれど」
「じゃあ今日の放課後にしましょう」
 優しい声で告げた言葉は彼女にだけかけたものではなかった。
「皆。今日の放課後スタープラチナ行かない?」
「スタープラチナ?」
「あそこに?」
「ええ、あそこにね」
 彼女達の通う学校の最寄の駅にあるカラオケショップである。彼女達はそこでいつもカラオケをして楽しい放課後を過ごしているのである。
「あそこに行きましょう」
「そうね」
「久し振りにいいわね」
 香里奈の周りの女の子達もその言葉に賛成して明るい声を出すのだった。
「それで彩夏もね」
「私も・・・・・・」
「一緒に行こう」
 今度は彼女に対してにこりと笑って告げたのだった。それに対して彼女は顔をあげたままで呆然となっていた。
「一緒にね。いいわよね」
「いいの?私は」
「いいのよ。行きましょう」
「そうよ。一緒にね」
「行きましょう」
 周りの皆も彩夏に対して言ってきた。優しい声で。
「彩夏もね」
「一緒にどう?」
「けれど」
「もう済んだことだから」
 今度はこう言うのだった。
「だから。一緒にね」
「皆で楽しみましょう」
 また言ってきた香里奈だった。

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