貴方の人生に幸あれと
[18/18]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
。
「そうだな……行くか、幽鬼の支配者に」
「……はいっ!」
「という訳だ。案内は頼んだぞ、ガジル」
「お願い致します、ガジル様」
「……仕方ねえな、とりあえず列車乗るぞ」
懐かしい夢を見た。それを夢だと断言出来るのは、もう2度とあの光景の中にいる事が出来ないと解っているからだろうか。
僅かに揺れる飛行船の中、魔法で動いているからか振動は少ない。割り当てられた部屋のベッドに寝転んだまま、掲げた左手の甲を見る。普段は指貫きグローブで隠れたその場所には、渦を巻くような黒い紋章。
自分で消すと言って、結局消せていないそれを右人差し指でなぞる。もうこの紋章を刻んでいる魔導士はきっといない。
「……滑稽だ、本当に」
どこまで行っても、どこに行きついても命令される事は共通で。
それが何より馬鹿げた事だと解っているのに逃げ出さないのは、そんな自分自身すらも馬鹿だからか。それとも―――ほんの少しだけ、期待でもしているのか。彼女なら止めてくれる、彼女なら……。
「……全く」
そんな役割を、ようやく掴んだ平穏の中で暮らす彼女に押し付けてはいけない。
何度も繰り返した思考をまた繰り返して、黒尽くめの青年は瞼を下ろした。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ