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Element Magic Trinity
貴方の人生に幸あれと
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てきた辺りには少し驚いたのだが、まあそれはさておき。

「それで…私達は、これからどうするのですか?」
「ん…そうだな、とりあえずは職と宿か。しばらくは俺の金で持たせるが、それ以降の暮らしも考える必要があるし……まあ、どうにかはする」
「ほぼ無計画じゃねえか」
「仕方ないだろ」

ガジルにそう返して、これから数日の暮らしに考えを巡らせる。
出来るだけ安い宿を探し、出来れば早めにこの街からも離れたい。とりあえず今日はここで休んで、明日には列車で故郷から更に距離を置こうか。
それから仕事。幸いにもザイールは魔導士だ。滞在する街の魔導士ギルドに短期加入させてもらって仕事をこなせれば、2人分の生活費くらいは何とかなるはずだ。

「おい」

と、そこまで考えて、ぶっきらぼうに呼びかけられた。
顔を上げれば、相変わらず強面のガジルがこちらを見ている。この表情をいくらか崩せばマシだろうに、と思いつつ首を傾げていると、少しだけ言いにくそうな様子で口を開いた。

「…お前ら、ファントムに来ねえか」
「……は?」
「どうせ行くアテねえんだろ。そんなの放っておくのは後味悪ィしよ…このガジル様が面倒見てやるってんだ、ありがたく思え」
「今ので有り難さが半減して更に半減した」
「はあ?」

眉を吊り上げるガジルにくすくすと笑みを零す。顔に似合わないが、彼が密かに優しい事は短い付き合いだが既に解っている事だ。そしてそれに、シュランが信頼を寄せ始めている事も。
人見知りがちな彼女を思えば、少しでも知り合いが近くにいる方がいいだろう。王国有数のギルドなら仕事も多そうだし、生活に困る事はないはずだ。ザイールとしてはこれ以上ないくらいの好条件だし、あとはシュランに尋ねさえすれば―――と考えて、彼女の従順さを思い出す。
どこかの使用人かと疑いたくなるレベルで人に従う彼女の事だ、特に考えずに尋ねたら了承しない訳がない。だとすれば、どうにかして彼女に命令ではなく提案をする必要がある訳で。

「あの、ザイール様」
「ん?」
「その…私がこんな事を申し上げていい立場にない事は承知の上、なのですが」

考え込むザイールに声をかけてきた彼女の目は、あっちへこっちへと泳いでいる。いつも真っ直ぐに人を見るシュランにしては珍しい仕草に疑問を抱えていると、意を決したように黒い目がこちらを見つめた。

「私っ、幽鬼の支配者(ファントムロード)に行きたいです!」

―――――どうやら、心配は無用。
あと心配すべきは、ギルドに入ってからの事だろうか。蛇髪はあっても魔法は使えない彼女に魔法を教える必要がある他に、人付き合いも最低限は必要になってくる。
けれど、その心配は全て後回し。まずは彼女が初めて見せてくれた意思を、真っ直ぐに尊重する事から始めよう
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