暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
貴方の人生に幸あれと
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らすれば魔法の一種かなって思うしね。それに、ガジルからすれば本当に些細な事だったのかもよ。だってほら、腕とか鉄に変えられるじゃない?」
「ええ、あの時のガジル様もそう仰って」

思い出す。あの時の衝撃と、自分は周りが言うほど特別なんかではないと知った時の歓喜に似たそれを。世界なんて大規模から見た自分は、どれだけ特殊な体質であってもちっぽけでしかないのだと、彼は教えてくれた。
きっと、ザイールには最初からそれが解っていたのだろう。シュランよりも外を知っている彼からすれば、バケモノなんかじゃないという言葉は適当な慰めなんかではなかったのだ。もちろん、彼の優しさを適当だなんて思った事は1度だってないのだけれど。

「そういえばさ、そのザイールって人はどうしたの?」
「さあ…それが、私も存じ上げておらず……幽鬼の支配者(ファントムロード)には一緒に加入したのですが、抗争の数か月ほど前からお見掛けする事がなくなってしまって」
「そっか…じゃあ今、どこかのギルドにいたりするのかな」
「どうでしょう……あの方は私が引っ張り出してしまったようなものですから、今頃はどこかで家庭を持っていらっしゃるかもしれませんね。或いは、そういったお相手がいらっしゃるか。元々、そのような暮らしをするはずの方ですし」

何気なく思い描いた彼の現状は幸せだろうか。別れの言葉もないままにいなくなってしまったけれど、少しでも自分の事を覚えていてくれたら、それだけで十分だ。
そうである事をそっと願うシュランの向かい側で、苦笑いを浮かべたレビィがぽつりと呟く。

「……それは、ないと思うなあ」

―――だってその人、明らかにシュランの事好きだよ?
その一言を第三者である自分が口にするのは気が引けて、どうにかこうにか呑み込んだ。








「……よし!」

ぐっとザイールが拳を握りしめる。シュランがほっと安堵の息を吐いて、ガジルがどこか不敵気味に笑った。空はまだ鮮やかなオレンジ色で、日没まではそこそこの時間を残している。
そして、そんな彼等の視界には隣町がはっきりと見えていた。結局最短で安全なルートを街に近づく危険を承知で進み、どうにか誰にも見つからずに街から離れる事が出来たのだ。

「見つからずに済んだな…よかった」
「あのオヤジの事だ、町民全員集めて喚いてるかもな。バケモンが逃げたって」
「ああ…確かに有り得る。だとしたら有り難い誤算、とも言うべきか」

すっきりとした笑みを浮かべて、足元に置いた荷物を持ち直す。家に戻れない以上ザイールの荷物には困ったが、ガジルが町長と会話していた昼間のうちに人目を盗んで最低限用意出来たのには助かった。洋服が数着と用意出来る限りの財産、更にシュランが冷えるといけないからとコートを引っ張り出し
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