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Element Magic Trinity
貴方の人生に幸あれと
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る、()()()()()()()の事かと。

「それだけ、って…」
「本当にそんだけみてーだな……んだよ、その程度でバケモンだ何だって喚いてやがったのか。くだらねえ」

その強面に浮かべるのは不機嫌さか、それとも嫌悪だろうか。とりあえず言えるのは、彼等の考えはどうやっても一致しないという事だけだ。どんな手を尽くしても、彼が「くだらねえな」と吐き捨てて終わるだろう。
王国最強と言われるギルドの1つに依頼を出して、優れた魔導士を頼むと依頼書に付け加えて。報酬だってこの手の依頼の中ではかなり高額、なのに結果として丸め込めない。これでは努力が水の泡だ。
それは困る。バケモノ云々などではない。このままでは町民達からの称賛が向けられないではないか。

「い、いえ…確かに魔導士様のような方からすればその程度ですが、私達から見ますと、それはそれは脅威でして……」
「知るかよ、んな事」

必死に絞り出した言葉すら蹴り飛ばされる。ギロリと睨み上げる赤い目の恐ろしさが、今になってようやく感覚として伝わってきた。もう少し早く気付いていたのなら、別の言葉を用意出来ただろう―――いや、それすらも今は怪しい。

「で…ですがね魔導士様」

どうにか繋ぎ止めようと呼びかけて、どんな言葉でも彼を掴む事など出来やしないのだと悟る。吐き捨てた言葉の通りに、飽きに似た表情。それが無性に腹が立って、頭に上りそうな血を必死に抑えつつフィガの脳は別の策を弾き出した。
そうだ、この魔導士はあのバケモノの姿を知らない。蛇になる髪といっても、実物を知る自分とは思い描いているものが違うのだろう。うじゃうじゃと群れを成す毒々しい色の蛇達、切っても切っても再生する不死身の集合体とその核たるバケモノを見れば、彼だってその恐ろしさに気づくはずだ。

「でしたら魔導士様、そのバケモノをご覧に入れましょう」
「あ?」
「ご覧になればご理解頂けるはずです。あのバケモノが私達の生活を脅かしていると!」

そう言って、社の扉に手をかける。半年ほど前、初めて息子をこの社に行かせた辺りから付けられた鍵はどうやらかかっているらしい。だが、いくら鍵を付けたとしても社の古さは変わらず、このくらいなら体当たりを繰り返せば呆気なく開いてしまう。
笑みが止まらない。背を向けているから気づかれてはいないだろう。にやにやと浮かべる笑みを息子が見ていたら「欲深い愚か者が」とでも吐き捨てていただろうが、今のこの街にフィガの敵になる者は誰1人としていないのだ。
もう誰も邪魔をしない。町民達は皆バケモノを忌み嫌い、追い払うべく動いた自分はまさしく英雄そのものだ。そうなればこの地位は確固たるもの。誰にも奪われない、彼が死ぬまで永遠に約束されたフィガ・フォルガの席。

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