前編 重力戦線異状なし
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紙袋から続けて地図を取り出す。
巨柱を中心に描かれたヘキサヴィルの地図には所々に青い曲線と赤いバツ印が点けられている。
シドーは特に落書きの多い場所を指さして、
「行方不明になった重力船の航行予想と消失予想地点だ。見たらわかるだろうけど、消失は工業地区『インダストリエ』付近で最も発生している」
つまり、一連の消失事件の原因はその近くに存在する、と警務隊はみているようだ。
インダストリエ行きの電車に乗ったことに納得がいった。
「そのあたりから船探しをすればいいってこと?」
シドーはしばらく考えるように地図を見つめていた。
そして、申し訳なさそうにうつむいた。
「いや……実は、重力船の場所についてはアタリがついてる。インダストリエとヴァン・ダ・センタリアレを結ぶ線路の真下だ」
消えた重力船の行き先はわかっているというわけだ。
それなら、わたしが行く意味はなんだろう。
まさか、重力船をヘキサヴィルまで運ぶのを手伝ってほしいというわけでもないだろう。
「問題は、まわりにネヴィがうろついてることなんだ」
ネヴィ。
紅黒の怪物。
意思を持ったエネルギー体。
思わず身を乗り出していた。
想像通りの反応だったのだろう、シドーがうなずく。
「そうだ。ネヴィがまた現れたんだ。しばらく表に出てこなかったあいつらが大量に。しかも、様子がおかしいんだ」
ネヴィは本来、本能のままに破壊と暴力をふりまく存在だ。
しかし、今回発見されたネヴィは襲撃した重力船をスクラップにせず、どころか傷つけないように丁寧に自分たちの巣へと運んで行ったらしい。
本能を抑え込み、理性的に行動している。
まるで、何者かに操られているかのように。
「パトリアの一件以来、軍部は以前ほどの強権を持っていない。市民からの反発もあるが、街の復興に費用や人材が割かれているのもそれを後押ししている」
対ネヴィ兵器も巨大重力戦艦も、市民からの反対運動で兵器庫のこやしになっている。
現市長ドネリカが極秘裏に進め、盛大に失敗したパトリア・トキシカのもたらした影響は、同じく市長の秘蔵っ子であった対ネヴィ特殊部隊にまで及んだのだ。
かつての大部隊は機能せず、ネヴィに対抗できる存在は今や数えるほどしかいない。
わたしと同じ能力を持ち、かつては告死鳥とまで呼ばれ忌み嫌われた『グラビティ・クロウ』。
対ネヴィ特殊部隊のエース、右手と両足が機械の『シーワスプ=ユニカ』。
そして、重力姫と呼ばれる『グラビティ・キトゥン』。
クロウはもともと警務隊とそりが合わず、ユニカはどこにいるのかわからない。
だから、わたしに白羽の矢が立つのは当然ともいえた。
どこか遠慮がちなシドーにわたしは笑みを浮
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