第二百三十八話 幕府その九
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「この家を御三家とする」
「お三方のお家を」
「将軍を継げる家を」
「嫡流に何かあればどれかの家から出す、その際は話し合いで決めよ」
このことも言うのだった。
「よいな」
「はい、そのことも」
「わかりました」
「その様に」
「ではな」
こう話すのだった、信長は先も見ていた。このことも決めてだった。
出陣の用意が全て整うとだ、その時に言った。
「出陣は明朝とする」
「はい、伊賀に」
「あの地に」
「留守役は源五郎じゃ」
長益に命じた。
「よいな」
「はい」
長益も応える、これで決まった。
信長は全てを告げ終えたその夜帰蝶の部屋に入り彼女に笑って言った。
「では明日からな」
「伊賀にですね」
「行って来る」
こう笑顔で言うのだった。
「そうしてくる」
「ではお気をつけて」
「そこで魔界衆を討つが」
ここでだ、信長は妻にこうも言った。
「そこでは決まらぬな」
「ではもう一戦はあるな」
「次の戦は」
「うむ、実は堺の利休から奇妙な話が来た」
「と、いいますと」
「堺や神戸、長崎等の港から柄の悪い南蛮や明の者が消えたという」
「あの国々の」
帰蝶もそう聞いて不思議に思った。
「何かおかしいですね」
「急に皆消えた、これはな」
「何かありますね」
「御主もそう思うな」
「やはりこれは」
「魔界衆じゃな」
信長はあえてこの名を出した。
「あの者達の仕業じゃな」
「そうした他国の者達も抱き込み」
「そのうえでな」
「我等に挑むつもりですか」
「普通はそこまでは考えぬ」
とても、というのだ。
「他の国の。しかもならず者達の力を借りるとはな」
「他の国から力を借りれば」
「後でどんな見返りを言われるかわからぬ」
「だからしませんが」
「あの者達はこの国の者達ではない」
「本朝にいましても」
「本朝にはおらぬ」
即ち日本のだ、まつろう者ではないというのだ。
「そこが違うからな」
「だからですね」
「うむ、その者達の力もな」
明や南蛮のならず者達もというのだ。
「使ってじゃ」
「戦うのですね」
「そうじゃ、それにも躊躇せぬ」
「それは国を売ることなのですが」
「だから本朝の者ではないからじゃ」
だからだというのだ。
「出来るのじゃ」
「そうしたこともですか」
「抵抗がないというよりかはな」
「国を売るということでもない」
「あの者達にとってはな」
日本にいながら日本にいる者達ではないというのだ、そうした話をしてそのうえでだった。信長はこの日も早くに寝てだった。
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