第二百三十八話 幕府その七
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「拙僧は本願寺の法主として」
「その立場でか」
「魔界衆のことに気付き戦わねばならなかったのです」
己のすべきことにだ、こう言ったのだった。
「民を戦から救うどころか。あの者達の企みに乗るとは」
「本願寺自体が」
「迂闊でありました、やはり寺は武を持ってはならない」
己の過ちを認めた言葉だった。
「そのことを思いました」
「では」
「本願寺はです」
それではと言ってだ、そして。
ここでだ、彼は言ったのだった。
「今度二度と武を持ちませぬ」
「前にも誓ったが」
「あらためて誓いまする」
「ではこれより本願寺は」
「武を用いず教えによってです」
一向宗のそれでというのだ。
「民を救いまする」
「そうすることを誓うというのか」
「はい」
まさにという返事だった。
「そして本願寺も分かれましたが」
「西と東にな」
「子達に継がせます」
そのそれぞれをというのだ。
「思えば本願寺は力が大きくなり過ぎておりました」
「そしてその大きさ故にというのじゃな」
「天下を乱そうとする魔界衆に付け込まれたうえ」
だからこそだ、あえてというのだ。
「今後そうしたことがなき様に」
「あえて東西に分けてじゃな」
「そこまでの力がない様にします」
教えのにに生きると共にというのだ。
「天下を乱すことのなきようにする為に」
「そうか、ではわしの政に従いじゃな」
「以後僧兵も荘園も持ちませぬ」
「そうしてくれると有り難い」
「その様に。そして魔界衆との戦ですが」
この戦についてもだ。顕如は述べた。
「本願寺はもう戦いませぬが」
「それでもか」
「陣中にいて宜しいでしょうか」
「戦の時にか」
「はい、そうして宜しいでしょうか」
「構わぬ」
信長は微笑んで顕如に答えた。
「では安土に参るがよい」
「それでは」
「しかし御主達は陣中にいてもじゃな」
「兵はもうおりませぬ」
僧兵達はというのだ。
「一揆も起こしませぬ」
「一向一揆もじゃな」
「民の暮らしは乱してはなりませぬ」
その為にというのだ。
「ですから」
「それでじゃな」
「もう一揆も起こさず」
「陣中に入ってもじゃな」
「兵は動かすことはありませぬ」
このことをだ、信長に約するのだった。
「その様に」
「それではな、共に安土に行こうぞ」
「さすれば。ただ」
「うむ、御主は馬はじゃったな」
「乗れませぬ」
僧であり馬術は習っていない、それでだ。
「籠か輿で行きまする」
「そうするか」
「その様に」
「わかった、ではそれでな」
「遅れれば後から参ります」
その安土にというのだ。
「それでは」
「うむ、急ぐからな」
信長もこう返す。
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