巻ノ二十六 江戸その三
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「休もうぞ」
「はい、今宵は」
「干し飯を食ってですな」
「ゆっくりと休み」
「そのうえで」
「明日の朝日の出と共に江戸に向かう」
目指すべきそこにというのだ。
「よいな」
「さて、江戸は何もないとのことですが」
「果たしてどれだけ何もないのか」
「かえって見たくなりましたな」
「そうしたことも」
「ははは、こうした場所であろう」
幸村は江戸が何もないと聞いて実際に何もないのか見たくなったという家臣達にだ、笑ってこう言ったのだった。
「武蔵の原にあるからな」
「こことそのまま続いている」
「それで、ですな」
「江戸もまた同じ」
「見渡す限り何もない」
「そうしたところですな」
「そうであろう、しかしここまで何もないと」
武蔵自体についてもだ、幸村は言った。
「かえってよい」
「田畑を開墾したりですか」
「そして町もですか」
「広くよいものを築ける」
「そうなりますか」
「それが出来る、そして城もな」
町といえば城下町だ、その城下町を置く城もというのだ。
「凄いものを築けるぞ」
「小田原の様な」
「ああした城ですか」
「そうじゃな、大坂であろうか」
幸村が話にだした城はこれだった。
「大坂城の様な、な。川も多いしそれ等も堀に使った」
「まさに大坂城の様な」
「そうした城をですか」
「築ける」
「そうなのですな」
「それが出来る、しかもここは四神相応の地じゃ」
このこともだ、幸村は言った。
「栄えさせることが出来る」
「都の様に」
「あそこまで、ですか」
「栄えさせられる」
「そうした場所ですか」
「拙者はそう思う、では明日行こうぞ」
その江戸にとだ、こう話してだった。
主従は今は寝た、そしてだった。
朝になってすぐに江戸に向かった、飯は朝も食った。
そうして東に進み江戸に来るとだった。そこは。
聞いた通りまさに廃城同様だった、城ではあるが。
あちこちが崩れ落ちていて人がいる気配もない、その城を見てだった。
霧隠と筧がだ、唸って言った。
「これではな」
「城とは呼べぬ」
「守るどころではない」
「まさに廃城ではないか」
「話は聞いていたが」
「これ程とは」
清海と伊佐の兄弟も言う。
「人もおらぬ」
「酷い有様です」
「周りも何もない」
「守る自体が無理じゃな」
由利と根津も言うのだった。
「廃城になったのも無理はないか」
「河越城もあるしな、武蔵には」
「しかし、小さい城じゃな」
「廃れておること以外にもな」
今度は海野と望月が言った。
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