暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
On the stage
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リした空気ぁよぉ。…………よっし」

パン、と。

自らの両手で気合いを入れるように、少年の姿をしたモノは己の頬を張る。

乾いた音は、不思議と耳に残った。

そして。

「やるか」

その言葉。

その一句をきっかけに。

空気が。

大気が。

空間が。

怖れをなしたかのように、一気にその粘度を跳ね上げた。

鈍重な時間の中で、唯一己の時間を手に入れ、進んでいる《ソレ》は、粗野で野卑な笑いを浮かべながら一歩を踏み出す。

だが、その背中に。

絶対にこのまま行かせてはならない、と。

そんな思いが込められた、しかし弱々しい声が届く。

「ま、待って」

「……ぁあ?」

出鼻をくじかれた、とでも言うように、途端に不機嫌そうに口をひん曲げ、極めて億劫そうに少女のような少年の形をしたナニカが振り返る。

その表情にさえ肩を震わせ、だが折れない意思を秘めた瞳を片時も曇らせることなく、少女は口を開いた。

「あなたは……誰?」

「あ〜?……はっ、オイオイ。前に一回会っただろぉが。つっても、あん時ぁロクに自己紹介もしてなかったかぁ?」

「前……?」

記憶を辿らせるが、レンにこんな言葉遣いをさせる存在などいない。

そんなことがあったら……あったら……。

「あ……。笑う棺桶(ラフコフ)討伐戦の時の――――」

あの時の情景を思い出して再度身を震わせるユウキに、にやりと笑った少年は戦場へと向き直る。

その後ろ姿にあの時と同様の何かを覚えた少女は、向かわせまいと言葉を紡いだ。

「何を、するつもりなの?」

「……アイツを止める」

「………………」

思わず二の句がつけなくなるユウキを追い詰めるように、突き放すように、少年の姿をしたモノは続ける。

「これぁ、俺が……俺達がやらなきゃぁいけねぇことなんだよ」

かかっ、くかかかかっ、と。

乾いた哄笑を響かせながら、《鬼》は呟く。

独り言のように。

思わずとでも言う風に。

狂怒は、言う。

「やっと……終われる」

直後。

轟音と烈波がユウキの顔を叩き、一瞬後に目を開けた時には。

その場には、誰もいなかった。










全身を躍動させながら、一匹の獣は地を駆けていた。

いくら少し休んだとはいえ、心意が仮想体に与えるダメージはそうそう簡単に消えたりはしない。

痛む関節や突っ張る皮膚、肉が悲鳴を上げ、鈍痛と激痛が交互に警鐘を鳴らしてくる。

移動速度も遅い。

主人格(レン)ならば、こんな状態でもかなりの速度を叩きだすのだろうが、あいにく狂怒の知識にそんなものはない。日頃、少年の走りをし
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