第1話「外見は髪型と目のパーツで判断できる」
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双葉に言われて、たまは気になっていたもう一つの『違和感』を口にした。
「時々自分の中に『誰か』がいるような気がします。皆様が笑うと、『その方』はとても嬉しそうな表情をなさるんです」
「その者が笑っていると」
「はい」
思考回路とは別の所で喜んでいる気持ちがある。
身体の奥底に存在する自分じゃない全く別のモノ。
それを『魂』といっていいのか分からない。
けれどたまは頷いて、もう一度確かめるように言葉を繰り返す。
「『娘に笑顔を』―― 誰かは不明ですが、もしかしたら私は今までずっとそのために稼働していたのかもしれムせゾ」
急におかしくなった口調に双葉は顔をしかめた。
心なしか、たまの声から雑音も聞こえたような。
「どうした?」
「すみません。少々バグが発生したようです。気になさらないで下さい」
「そうか。……で、お主はどうなんだ」
「?」
「その者は笑っているとして、お主自身はどうなんだ」
まっすぐに自分の瞳を見てくる双葉に、しばし間を置いてたまは答えた。
「……私が働いていなくても皆様は笑っていて、私はそれを嬉しく思いマす」
これは『誰か』から来るものじゃない、自分自身の気持ちだ。
どうしてか分からないが、素直にそう思う。
でも――
「機械は働いて皆さんの役に立たねば意味がない存在なノに……最近は今日のように過ごすのモ悪くないと思ってしまいます」
それはあってはならないことだ。
自分にあるのは人の為に生まれ、人の為に終わりを迎える役目だけ。
だから自分の時間を過ごすなんて、こんなの機械の生き方に反している。
「おかしいですよね……」
「恥じているのか」
思い悩むように呟くたまに、双葉の冷淡な眼が向けられる。
だがそれは罵倒でも軽蔑するでもない。まるで意志を問いかけるような瞳に見えた。
「……いいえ」
たまはゆっくり首を振って、微笑を浮かべた。
「私がソうしても皆様が笑顔で過ごせるナら、一緒に楽しみたイです。私は『その方』だけでなく、お登勢様や銀時様たちモ笑っテいて欲しいと……笑顔でいて欲しいと思います」
「なら、お主がしたいようにすればいい。働くだけが全てじゃないからな」
素っ気なく言うが……双葉は悟っていた。
どうしてたまがそう望むのか、そう考えるのかを。
なぜなら双葉も、『笑顔』の傍にいたいと望んでいるからだ。
たまがなぜ造られたのか、過去に何があったのか、双葉は何も知らない。
けれど、これだけは分かる。
たまは己を見出しつつある。
他の誰でもない己を見出して、世界を広げようとしている。その一歩を踏み出そうとしている。
新しい一歩はどこへ向かうのか、行き先もわからない。
まさに闇の中
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