第1話「外見は髪型と目のパーツで判断できる」
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て来られると困る理由があるからだろう。その証拠に『スナックお登勢』の中からは普段よりも話し声や物音が聞こえる。何か準備をしているのは明らかだった。
そんな店の戸を開けて、彼女を押し戻すのは抵抗がある。それに兄に任された以上、投げ出すわけにもいかない。
「ま、お主には毎度ピザもどきを作ってもらっているからな。仕方ないから付き合ってやる」
そう言いながら双葉はたまを連れて、かぶき町を回り始めた。
* * *
『かぶき町』――欲望うずまく夜の街。
しかしその活気は昼でも変わらない。日差しが降り注ぐ繁栄街をたくさんの人々が歩いており、『仕事』・『遊楽』・『闇の取引』と様々な理由を抱いて誰もがそれぞれの目的地へ向かっていた。
そんな多くの人々が行き交うかぶき町で、双葉とたまは特に行く宛てもなくただ歩いていた。
付き合うと言ったものの、たまの目的は『ハメを外す事』。あまりに漠然とし過ぎていて、双葉は混雑する人の波に流されていくしかなかったのだ。おまけにどちらも口数が多い方ではないため、並んで進むだけという微妙な空気が続いていた。
そんな沈黙を破るように口を開いたのは、機械であるたまだった。
「あの、双葉様は銀時様とどちらへ行かれるご予定だったのですか」
「ピザを……買いに行くつもりだった」
「今から行きますか」
「いや、もういい」
「そうですか」
会話はそこで終わった。
別に銀時と行くはずだったピザ屋に一緒に行ってもよかったが、何となくそんな気になれなくて、双葉はたまの提案を断った。そもそも機械が飲み食いできないだろとは、後から思った。
しかし、ずっとこのままなのも相手に悪い。機械にそんな気遣いは無用かもしれないが、双葉はこれからの事を考え始める。
だが彼女が何か思いつくよりも早く、たまが次の質問を切り出した。
「双葉様は休日をどのように過ごしてますか」
「どのようにって……」
単純な質問だったが、双葉は思わず言い淀んだ。
依頼がなければ万事屋は年中休日で、兄は遊んでばかりだ。
そんなぐうたらな兄の世話を焼いたり、金を無駄遣いしないよう見張ったり。
そのために兄と外を出歩いたり、時々スナックで一緒に飲んだり。
暇さえあれば、兄の隣でピザもどきを食べる。
それが今の休日の過ごし方だ。
――………。
改めて思い返してみると、自分は兄とよく一緒にいる。いや兄としか時間を過ごしてない。
数ヶ月万事屋で暮らして天人や駄メガネともそれとなく会話は増えたが、兄ほどではない。
――全く、どうしようもないな。
そんな自分が嫌になる。またいつもの自己嫌悪だ。
けれど、他に趣味や買い物を一緒に楽しむような知人はいない。『友達』と呼べるような人間もいない
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