一章
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輝かせた女。呆れるほどに露出した肌からは血の気も温度もない。厚く真っ赤な唇に白い牙が光る
「盾になる気はないが……妾はいつまでも行くぞ?魔王よ。長い夜を共に過ごそうではないか」
細く、長い指に髪を絡ませ、音もなく長い黒のドレスをゆらす
「その体から血の一滴のこさず渇れ果てるまで」
「よるな、吸血鬼が」
俺と同じ変形型のティナ・吸血鬼(ヴァンパイア)
その所有者、ルナ・ノクス
「つれないよのう、魔王。もっと楽しまねば損するぞ?」
「俺の力目当てで付きまとうストーカーがいなけりゃ、多少楽しめるかもな」
そう。こいつの狙いは俺の首でも、金でもない。俺の破壊の力だ
「悪魔の力は神に仇なす魔の力。神の作りし命を壊し、神を崇める心を壊し、神の恵みのティナを破壊する。背の翼もその爪も飾りのようなもの。いつ、妾にその力を使ってくれるのだ?」
「言ったろ。俺ができるのは、代償を知り相手の了解を得たときだけだ。お前が代償を知ってりゃあ今すぐにでも体ごと破壊してやるよ」
「それがわからぬと何度言えばわかる」
「ならついてきても無駄だって何回言わせる。あー、めんどくせぇ」
変形型は、俺も含めてだが、とくに代償がわかりづらい。ティナを得てすぐに眼が見えねぇなら、視力が奪われたんだろうって誰にでもわかる
でも、変形型は変形型だからこその特長がある
例えば吸血鬼。こいつは食がない。血しか飲めない
加えて太陽にも出れない。不老。吸血鬼だから
全部代償といえば代償だが、特性といえば特性
こいつは未だに、代償を理解してねぇ
まぁ珍しくもない
何を奪われたか。奪われ過ぎてわからない場合もどうでもよすぎてわからない場合もねぇことはねぇ
この女は、吸血鬼のティナを破壊し
人として死にたいらしい
太陽の下で
「魔王よ。どこへ向かう?そなたの過去を探しに」
「……とりあえず日の出だ。寝る」
「うむ、そうだな。ついて参れ、妾が案内しよう」
「へぇ?たまには気が利くじゃねぇか」
ちなみに俺は日に殺されることは多分ない(死ぬほど太陽を浴びる気なんかねぇ)が、こいつは本当に焼け死ぬ。そうならないために、日がでればコイツは蝙蝠になって、よたよたと飛ぶ、らしい
残念なことに見たことはねぇ
「こっちだ」
吸血鬼の長い指が指す先には、ひとつの砦
いかつくて汚ならしい格好をしたやつらが見張る場所
「……おい」
「よいだろう?きっとお前の好きな酒もある」
「あれは……宿じゃねぇだろ」
「うむ。盗賊団の根城だ!」
どこの世界に盗賊の本拠地を宿として案内するやつがいるだろうか
あー、もうめ
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