第158話
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す。
冥土帰しは先程、集中治療室で愛穂の容体を確かめた結果をカルテに追加記入していく。
愛穂の容体がギリギリだった。
切断されたのも重症だが出血が特に多かった。
桔梗が適切に処置しなければ死んでいたかもしれない。
どんな病気・負傷であっても治せる彼だが死という結果だけは覆す事はできない。
彼は必要記入を書いてから机の電話機に手を伸ばす。
外線ボタンを押してから、シャープを数回叩く。
乱暴なようでいて、一定のリズムがあった。
その後に、特殊な番号を次々と打ち込んでいく。
受話器に耳を当てると、普通の呼び出し音は聞こえなかった。
ワンコールもなく、即座に相手へ繋がった。
「おはよう、アレイスター。
さんざん好き勝手に暴れた気分はどうかな?」
『とてもとても。
ようやく第二段階へシフトできた、という所だ。
この程度で好き勝手などと呼ぶのはまだはや」
「一つ言わせてもらおう。」
音質はとてもクリアで、同じ電話回線を使っているかと疑問を抱くほどだった。
アレイスターの言葉を遮って彼は言う。
彼の声は今までと決定的に違った。
別に声が変わった訳ではない。
その声には言い様のない何かがあった。
「彼らを利用しようとしているのなら早々に手を切った方が良い。」
『ダゴン秘密教団の事かな。』
「君は何も分かっていない。
彼らは僕達の頭では理解できない位置にいる事を。」
『そんな事は分かっている。
だが、私は引けない所まで来ている。』
「そんな言葉が出ている時点では何も分かっていない。
学園都市の闇何かでは比べ物にならない何かを持っている。」
『まるで、行ってみた事があるみたいな言い方だな。』
アレイスターの言葉を聞いて彼は一瞬だけ黙った。
そして、口を開けて言う。
「僕は元ダゴン秘密教団所属だ。」
アレイスターは彼の言葉を聞いて何も言い返してこない。
それでも言葉を続ける。
「僕がこれほどまでに治療に優れているのは彼らの力があったからだ。
あまり話したくない過去だから多くは語るつもりはない。
でも、これだけは言わせてもらう。
君も僕の患者だからね、忠告くらいはさせてもらう。
彼らを甘く見るな。
彼らの闇はこの宇宙のように果てしなく深く、光が一切届かない地獄そのものだ。
僕が言いたかったのはそれだけだ。」
彼はそれだけを言い終えるとアレイスターの言葉を聞かずに電話を切る。
ふぅ〜、と大きく息を吐いて窓の外を見る。
依然と止まない雨の中、静かに思う。
(バルド、君は一体どこに向かっている?)
とある個室。
その部屋には何もなかった。
部屋はそれほど広
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