圏内事件 前半
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キリトが戻ってくると本題に入った。今起きているのに遭遇した、キリトたち三人は圏内殺人の謎を追っていると言う。
「そうか。それでお前等は、攻略に参加してなかったのか。あと、聖竜連合のシュミットも」
そう言ってシュミットを見る。シュミットは攻略のときの堂々とした感じが一切なく、ただ何かに怯えていた。
「あれは、グリムロックじゃない。グリムロックはもっと背が高かった。あれはきっとリーダーのグリセルダだ……。あのローブ、彼女が街に行くときに着ていたのと同じだった。彼女は俺らに復讐しに来たんだ。あれは、彼女の幽霊だ」
そう言ったシュミットはタガが外れたかのように笑い声をもらす。
「幽霊なら何でもアリだ。圏内PKもお手のものだ。どうせなら、彼女にボスたちを倒してもらおう。幽霊ならもう死ねないからな」
そう言ったシュミットの前にキリトが一番初めにゲツガがこの宿に来たとき拾っていたダガーを投げる。それを見たシュミットはしばらく凝視すると体を仰け反らせる。
「幽霊じゃない。そのダガーは実在するオブジェクトだ。SAOのサーバーに書き込まれた、何行かのプログラムコードだ。あんたの持っているショートスピアと同じ。信じないなら、それ二つを持って調べればいい」
「い、いらない!槍も返す!!」
シュミットは叫びながら素早く指を動かして槍を出す。出た槍を放り投げる。それをゲツガがキャッチする。アスナが穏やかな声をかける。
「……シュミットさん。わたしは幽霊なんかじゃないと思う」
アスナがそう言うとユキが言う。
「それなら、今まで死んでいったみんなも、全員幽霊になってもおかしくないもの」
ユキの言葉にアスナも頷く。だがシュミットは首を横に振った。
「あんたらは……彼女を知らないかだろ。彼女は……グリセルダは、強くて、いつも毅然としててでも、……不正や横暴にはとんでもなく厳しかった。あんた以上だよ、アスナさん。だから、自分を罠に嵌めて殺した奴がいるとすれば……彼女は絶対そいつを許さない。たとえ幽霊になっても裁きにくるだろう……」
そう言うと重い空気が部屋を満たす。それを最初にキリトが破った。
「……あんたがそう信じるなら、勝手にすればいいさ。でも俺は信じない。この二件の《圏内殺人事件》には、システム的ロジックが存在するはずだ。俺はそれを突き止めてみせる。……あんたにも、約束どうり協力してもらうぞ」
「きょ、協力……?」
「グリムロックの行きつけの店を教えるって、あんた言ったよな。今となっては、それだけが唯一の手がかりだ。何日も張り込むことになっても、必ず見つけ出す」
キリトはそう言うと、しばらくしてシュミットは椅子から体を持ち上げた。
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