第十八話「知らぬが仏?」※修正
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ら、入場するときも「手を組もう?」と、言ったのがわかった。
――でも……
周囲からすればそう思われるが、本当は違うなんてちょっぴり残念である。
「一夏ちゃん! コーヒーカップに乗ろうよ?」
「ああ、いいよ?」
比奈は一夏と共にコーヒーカップの元へ向かうが、その前に彼女は一夏へ一言いう。
「ね、ねぇ?」
「ん?」
「その……手、繋ごうよ? そうすれば、もっとカップルに見えるよ?」
「別に、もうゲート潜ったからいいんじゃ……」
「んもう! いいから?」
比奈は、一夏の鈍感さに呆れて少々無理やり彼の手を握った。
「行こうよ?」
「お、おう……」
妙に一夏は頬を赤くして彼女と共にコーヒーカップへ向かう。
――比奈の手、温かいな? 柔らかくて、良い匂いもする。
彼女の手から伝わるほのかな香りと温もりが伝わってくる。一夏は、そんな彼女の手を握るために何故か心臓がドキドキしてくる。
『一夏ちゃん! いっしょにお手て繋ご?』
途端に、謎のフラッシュバックが彼の記憶を横切る。
「……!?」
目を見開き、咄嗟に比奈を見た。しかし、彼女はキョトンとした顔で一夏を見た。
「どうしたの? 一夏ちゃん?」
「え……あ、いや……何でもない」
「それよりも、早く行こうよ?」
「ああ……」
久しぶりにコーヒーカップに乗るには少し恥ずかしかったが、比奈がはしゃいでくれたおかげで、そんなに自分は目立たずに済んだ。
その次も、様々なアトラクションを堪能した二人は、暗くなるまで遊び続けた。
ジェットコースターでの絶叫の際、比奈は隣に座る一夏にしがみ付き、お化け屋敷は驚いた比奈が咄嗟に一夏へ抱き付いてくるのが何度もあり、広場で開かれたマスコットキャラ達によるパレードは共に手を握り合って見物する。
そして、時期に遊び疲れた彼らは次に向かったのは観覧車だった。観覧車から見下ろすメガロポリスの夜景は見事なものだった。
「綺麗だね……?」
「ああ、こんな世界だってのが嘘のようだ……」
嫌なことばかりの世界だが、それでもメガロポリスの夜景の光は、まるで一つ一つが宝石のように輝いている。
――ずっと、このままでいられたらな……?
ふと、一夏に寄り添う比奈はそう思った。
「ここから、花火が上がったら……もっと綺麗だよね?」
比奈が何気ない言葉で一夏に言う。だが、一夏はそんな言葉から何かのフラッシュバックが蘇える。
『花火がおわるまで、一緒にいてね?』
『うん! いいよ?』
『終わるまで、寝ちゃだめだからね?』
『大丈夫! 大丈夫!』
そして、最後の大きな花火が上がると共に、女の子は一夏に囁く。
『好きだよ……』
薄暗い山の手の展望台を花火が照らしていた……
「……ッ!?」
ふと我に返った一夏は、すぐに比奈を見つめる
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