アインクラッド編
平穏な日々
紅色との日 01
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された勧誘を僕は断った。 それはもう、考える間もない即答で。
些か子供染みた拒絶の仕方ではあったけど、勧誘した本人が気にした素振りを見せないので僕も気にしない。
「僕はね、ヒースクリフ。 昔から人間って言うのが嫌いなんだよ。 それはあなたも知ってるでしょ?」
「《ドクター》の人間嫌いは有名な話しだ。 無論、知っているさ」
「そう呼ばれるのもずいぶん久し振りだね……。 懐かしいけど嬉しくはないよ、本当に」
「ふむ。 そう言う事情だと言うのなら仕方がない。 今日の勧誘は諦めるとしよう」
サラリと『今日の』と言える辺りがこの人の凄まじいメンタリティーだろう。
人の話しを聞かない。 自分の意思を押し通す。 他のものに目もくれず、ただ一心不乱に目標へと一直線。
アスナさんとも共通しているまっすぐさは、僕がまだ《ドクター》なんて呼ばれていた頃にはなかった価値観だ。
苦笑いを浮かべながらため息を吐いた僕に、ヒースクリフは「ところで」と続けた。
「アマリ君は嫌いではないのか? 彼女も人間のはずだが」
「うん? まあ、恋は盲目って言う解釈でいいよ。 アマリは僕の例外」
「例外か。 それは便利な言葉だ」
「僕に言わせれば卑怯な言葉なんだけどね。 と、そんな真面目な話しはどうでもよくって……。 それにほら、アマリは頼りになるからね」
「ふむ。 確かに彼女のアタッカーとしての能力は攻略組の中でも特筆するものがある。 特にあの火力は素晴らしいの一言だ」
「それは同感。 アマリはどんな敵でも圧砕する最強の矛だ。 たとえ敵がどれほど強固だろうと関係ない。 その一撃はこの世界の全てを終わらせる」
ほう、と興味深そうに眉を持ち上げるヒースクリフ。
「これは惚気話として聞き流してくれていいけど、この世界を終わらせるのはヒースクリフ、あなたじゃない。 キリトでもアスナさんでもないし、それに僕でもない。 もちろん、他の誰かなんて言う可能性は皆無だね。 この世界を終わらせるのはアマリだ」
「……楽しみにしておこう」
一瞬の緊張が僕とヒースクリフとの間に流れる。 けど、そんな空気もすぐに消え、僕はいつも通りニコリと笑い、ヒースクリフは感情の窺えない微笑を浮かべた。
ああ、今日も平和だ。
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