暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン -旋律の奏者-
アインクラッド編
平穏な日々
紅色との日 01
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
された勧誘を僕は断った。 それはもう、考える間もない即答で。
 些か子供染みた拒絶の仕方ではあったけど、勧誘した本人が気にした素振りを見せないので僕も気にしない。

 「僕はね、ヒースクリフ。 昔から人間って言うのが嫌いなんだよ。 それはあなたも知ってるでしょ?」
 「《ドクター》の人間嫌いは有名な話しだ。 無論、知っているさ」
 「そう呼ばれるのもずいぶん久し振りだね……。 懐かしいけど嬉しくはないよ、本当に」
 「ふむ。 そう言う事情だと言うのなら仕方がない。 今日の勧誘は諦めるとしよう」

 サラリと『今日の』と言える辺りがこの人の凄まじいメンタリティーだろう。
 人の話しを聞かない。 自分の意思を押し通す。 他のものに目もくれず、ただ一心不乱に目標へと一直線。
 アスナさんとも共通しているまっすぐさは、僕がまだ《ドクター》なんて呼ばれていた頃にはなかった価値観だ。

 苦笑いを浮かべながらため息を吐いた僕に、ヒースクリフは「ところで」と続けた。

 「アマリ君は嫌いではないのか? 彼女も人間のはずだが」
 「うん? まあ、恋は盲目って言う解釈でいいよ。 アマリは僕の例外」
 「例外か。 それは便利な言葉だ」
 「僕に言わせれば卑怯な言葉なんだけどね。 と、そんな真面目な話しはどうでもよくって……。 それにほら、アマリは頼りになるからね」
 「ふむ。 確かに彼女のアタッカーとしての能力は攻略組の中でも特筆するものがある。 特にあの火力は素晴らしいの一言だ」
 「それは同感。 アマリはどんな敵でも圧砕する最強の矛だ。 たとえ敵がどれほど強固だろうと関係ない。 その一撃はこの世界の全てを終わらせる」

 ほう、と興味深そうに眉を持ち上げるヒースクリフ。

 「これは惚気話として聞き流してくれていいけど、この世界を終わらせるのはヒースクリフ、あなたじゃない。 キリトでもアスナさんでもないし、それに僕でもない。 もちろん、他の誰かなんて言う可能性は皆無だね。 この世界を終わらせるのはアマリだ」
 「……楽しみにしておこう」

 一瞬の緊張が僕とヒースクリフとの間に流れる。 けど、そんな空気もすぐに消え、僕はいつも通りニコリと笑い、ヒースクリフは感情の窺えない微笑を浮かべた。

 ああ、今日も平和だ。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ