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ヴァンパイア騎士【黎明の光】
非日常的な日常
3

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――黒主学園・理事長室。


黒主棋聖と錐生澪は、対談の真っ只中だった。
ただ漂う空気は決して温かなものではなく――理事長を名乗る男は頭を抱えて唸っており、澪は相変わらずの無表情だ。


「……まさか、夜間部の生徒がねえ……」
「なので問答無用で屠りました」


淡々と報告事項を述べる澪の顔を、理事長はじっと見上げる。滅多な事では上下しない彼の温度。昨夜騒動に巻き込まれたというのにその表情は至って冷静で、思考を読み取れない。
澪はひと通りの事象を口頭で報告し続け、最後に以上です、と付け加えてからため息を吐いた。



「……一応言っておきますが、あの女は無事ですよ」



理事長の顔を直視こそしないものの視界には入るのだろう。無骨な口調で杞憂を告げる姿に、棋聖は堪らず吹き出してしまう。
澪は僅かに眉を寄せ、怪訝そうな顔で悪態を吐いた。


「……何笑ってるんですか。気持ち悪い……」
「なっ!失礼だな!」


澪の無礼な言い草に一瞬怒気は表すものの、棋聖の顔から笑顔は消えないままだ。
更に濃度を深める澪の訝しさを漸(ようや)く汲み取ってか、棋聖は一旦感情を抑え込むと、柔和な笑顔を見せた。



「大丈夫。君がいるからそこは心配してないよ」
「――へえ」


明確に賛辞を送っても、澪の興味は薄そうだ。頬の筋肉一つ動かさないままに理事長室のソファに腰掛ける。
そして、目線を空中に投げた。
その様子を見て、棋聖――理事長は首を傾げた。



「何か気になる事がありそうだね」



図星なのだろう。澪は首を反らし、理事長の方を振り向いた。
暫し無言でその表情を見つめていたけれど――別に、と呟いて再び顔を背けてしまう。

その姿が何だか幼稚に映り、ふっと理事長は頬を弛めた。



「君はわかりやすいからね。色んな意味で助かるよ」
「――余計なお世話だ」
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