第十話 エレオノールの訪問
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……しばらく経って。
『この話は無かった事にしよう』……そう言ったはずだった。
マクシミリアンは、目に見えて落ち込んでいるエレオノールに慰めの言葉を掛け続けていたが、無かった事にできなかったエレオノールの落ち込みっぷりは、逆に悪い事をしているのでは? と、思わせるほどだった。
(無かった事にしようって言ってるのに。真面目な人だなぁ)
マクシミリアンも、こういう、生真面目な人は嫌いじゃない。むしろ好意的に思っていた。
ともあれ、エレオノールをこのままにして置く訳にもいかない。
「ええっと、ミス・エレオノール。悲しいときは甘いものを食べると心が和らぐそうですよ」
その言葉を発した瞬間、マクシミリアンは心の中でポカポカと自分の頭を叩いていた。
(この馬鹿! もうちょっと気の利いたこと言えなかったのかよ!)
幸い、マクシミリアンの励ましに、ほんの少し元気付けられたのか。エレオノールは黙って頷きながら、モソモソとクックベリーパイを食べ始めた。
「……美味しいです」
「よかった、元気になったみたいで」
マクシミリアンもクックベリーパイを口に運んだ。
「うん、美味しい」
「……フフ」
エレオノールにようやく笑顔が戻って、マクシミリアンもホッと胸を撫で下ろした。
☆ ☆ ☆
「……ところで、ミス・エレオノール」
「何でしょうか? 殿下」
立ち直ったエレオノールと談笑して数十分、マクシミリアンはワルド子爵の事について聞いてみる事にした。
「ミス・エレオノールは、ワルド子爵がカトレアの治療に関わっていた事を知ってましたか? もし、知っていたら、どの様な治療内容だったか教えて欲しいのですが」
「ワルド子爵がですか? ……そう……ですね。そういえば、今から何年前か忘れてしまいましたが、ワルド子爵夫人がカトレアの部屋に出入りしていた事は覚えています。ですが、治療内容までは……」
「なるほど、ワルド夫人が……ミス・エレオノール、ありがとうございました。大変、参考になりました」
「殿下のお力になる事ができて、嬉しいですわ」
『手がかりを掴んだ』……そう、実感するマクシミリアンだった。
その後も談笑を続けていると、ノックがしてセバスチャンが入ってきた。
「殿下、ラ・ヴァリエール公爵閣下がお呼びでございます」
「ヴァリエール公爵が?」
エレオノールと顔を見合わせた。
「ともかく分かったよ。すぐに行く」
「殿下、私も、そろそろお暇させていただきますね」
「ミス・エレオノール。楽しい一時でした。また今度。」
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