非日常的な日常
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「――姫羅!」
目を覚ますと、凛ちゃんが私の顔を覗き込んでいた。
らしくなく、目には涙を溜めている。
覚醒したばかりの脳に情報を叩き込むため、私は視線を?徨わせた。
寝間着姿で私の手を握り、泣いている凛ちゃん。白が基調の壁。天井に取り付けられた立派なシャンデリア――ここまでを視界に招くと突如として私の頭は目覚めを迎え、慌てて起き上がる。
「そうだ、私、昨日風紀委員の仕事中に――!」
澪くんは?
あれからどうなったんだろう。確か白い制服の男子生徒に襲われて、殺される寸前だったところを澪くんが助けてくれて。澪くんの手には―――。
そこまで記憶を辿ると突然強い痛みが頭部を襲ってきて、私は呻き声と共に額を押さえた。
凛ちゃんが慌てた様子で寄り添い、背中を撫でてくれる。
「本当に……姫羅は、心配させないでよ。朝方に突然怪我して帰って来るしさ……」
涙声で囁かれた苦情に、私は顔を上げる。
怪我――言われてベッドから飛び降り、テーブルの上の手鏡を引ったくると自分の姿を確認した。
……首に包帯が巻かれている。昨日私が遭遇したモノは、悪い夢でも何でも無かったのだ。
唖然とする私の腕を、凛ちゃんが強く引っ張る。
「鏡なんて良いから、まだ寝てなよ。姫羅が落ち着くまで風紀委員の仕事は澪くんがやってくれるって言っ――」
「ねえ凛ちゃん、私今朝一人で帰って来たの?」
心配してくれている凛ちゃんの言葉を遮り、私は尋ねる。
思いの外元気な私の寝起きを見て安心したのか、凛ちゃんの涙は既に引っ込んでしまったようだ。常日頃のクールな面持ちで首を横に振る。
「いや、澪くんが部屋まであんたを担いで来てくれたんだよ」
……やっぱり。
私の記憶は、昨日奇襲を受けて澪くんに助けてもらった所から綺麗に途切れている。
初仕事で相方に迷惑を掛けてしまったという罪悪感と、ただでさえ怖い澪くんを怒らせたのではという焦燥感から、私は拳を握って立ち上がった。
クローゼットの前に掛けられている自分の制服を掴み、素早く着替え始める。
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