風紀委員の職務
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暗い室内で揺らめく灯火。
熱に溶かされた蝋が雫となって滴り落ち、金属の受け皿に白い斑点を作った。
「蝋燭、気を付けろよ」
金髪の青年が不安そうに忠告する。
彼が持つ蝋燭が窓辺のカーテンと近い距離に位置しているため、気が気では無いという様子だ。
忠告を受け、カーテンを捲り外の様子を眺めていた青年は蜂蜜色の髪を掻き上げて微笑む。心配御無用と言いたいのだろう。愛嬌のある面差しとは裏腹に、大胆不敵な行動だ。
しかしその言葉を無視する気も無いようで、手近なテーブルに慎重に蝋燭を置くと再び窓の向こうに注目する。
「妙だなあ。あの子は充分戦闘能力があるはずなんだけどね」
「可哀想に。怯えきってたじゃないか」
呑気な声とは対照的な、威嚇したような声が飛ぶ。
窓の外の光景によほど興味を惹かれているらしい青年は、アカシア色の瞳を級友に向けるとにこりと微笑んだ。
「なら君が助けてあげたら良かったじゃない。あの程度の相手ならお手の物だろ?」
「――それは、また面倒な展開になるだろ」
肩を竦める級友の姿を横目に見ながら、間違いないね、と青年は答える。
外からは許容範囲外の恐怖体験を経て気絶した少女を、銀色の髪の青年が抱き上げ連れ帰る様子が見える。
事の顛末を見届けて満足したのか、彼は自らの指で捲り上げていたカーテンの裾を離した。音も無く、それは定位置へと収まる。
そのまま青年は室内を闊歩し、備え付けのベッドに寝転がるとふう、と短く息を漏らした。
それは疲れや満足感から来るものではなく――愉悦から生まれた不浄な一息。
ベッド脇に設置された棚に手を伸ばし、乱雑にも開け放たれたままの引き出しを探ると錠剤が収まるシートを取り出した。既に幾つかは服用済みを示す空白が出来ており、残りの数個を一気に掌へ投げ打つと、それを口内へと煽った。
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