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ヴァンパイア騎士【黎明の光】
風紀委員の職務
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澪の説明では人物像をイメージ出来ない。
深く掘り下げようと口を開こうとした途端、突然隣の澪の足が止まった。


「な、なに?」
「到着」


見上げると、【救護室】と丁寧に書かれたプレートがドアの上部に設置されている。
目的地への到達を察し、姫羅は背筋を伸ばした。


「緊張する……」
「その緊張の意味が俺には理解出来ないけどな……」


憎まれ口を叩きつつ、澪がドアを開く。

窓に背を向け扉と対面する形で置かれたデスクと、アンティーク調の戸棚の中に無数に仕舞われた薬品類。足を踏み入れた途端漂う消毒剤の香りに、僅かに開け放たれた窓から吹き込む風ではためくカーテン――。
充分な面積を有する室内にはベッドが三つ設置されており、その中で窓際のベッドのカーテンだけが閉ざしてあった。



「先生、いないみたいだね……」
「……姉さんだけ回収出来れば問題ナシ」



自然と会話も小声になる。
薄手のカーテンで遮断された寝台へと進む澪の背中を、早歩きで追い掛ける。
……布越しに、女性らしき人影が揺らいだ。


「姉さん」
「……澪?」


か細く、可憐な声が仕切られた空間から返って来る。
返事を確認したところで澪がカーテンを開けると――細い影が、その肢体に縋り付いた。



「澪、何処に行ってたの――」



今にも泣き出しそうな震えた声が響く。
仕切りを開放するなり飛び込んできた姉の身体を澪は慣れた手付きで受け止め、幼子をあやすようにその小さな背中をポンポンと数回、優しく叩いた。


「入校式。姉さんは寝てただろ」
「起こしてよ……」
「何回も起こした」


……姉と言うより、妹のような感じだ。
顔は澪の身体に隠れて確認出来ないけれど、醸し出す雰囲気から伝わる。澪に対して甘えたいという欲求。

いきなりの展開に驚きはしたものの、美しい姉弟の絵柄に微笑ましさを抱いた姫羅は、そっと微笑んだ。
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