十二話:昔話
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。それに汚染された村はまさしく地獄絵図だったよ。村人全てがグールとなっていたんだ」
「……それでおとんはどうしたんですか?」
そうは聞くものの彼女の中では何となくであるが答えが出ていた。
衛宮切嗣であれば被害が出ないようにグールに変わった村人全員を始末しただろうと。
そう思っていたはやての予想は全てではないが裏切られる。
「……初めは逃げて、私達に助けを求めに来たよ」
「―――え?」
予想だにしなかった答えに目を丸くするはやて。
衛宮切嗣が為すべきことから逃げるなど考えられなかった。
彼は常に己の正義を貫き続けてきたはずだ。
だというのに、逃げたというのだ。全てから、己の責務から。
「私は彼を保護して、リーゼ達が村人の“処理”を行いに行った。その時に……助けてくれと言われたのだよ」
「誰を……ですか?」
はやては切嗣が助けてくれと言った主語は彼自身ではないことを悟っていた。
あの養父が心の底から救いを求めるとすればそれは他者を助けるためでしかないと。
これだけは絶対に狂いがないと自信を持って言えた。
「村人は助かるのかと、彼女が助かるのかと言われたよ……」
「彼…女?」
「ああ、ことの起点となった少女だ。私は彼に助けられないと言った。……それからかな、彼の目から全ての感情が消えたのは」
衛宮切嗣という男が本当の意味で機械となる決断を下したあの日。
その決断を下させたのは紛れもなく自身だと悔い、目を瞑るグレアム。
一方のはやてはどうしてもその少女のことが気になっていた。
あの養父をして殺せないと留まらせた理由は何なのかと。
「その人は……どんな人だったんですか?」
「詳しくは分からないが……彼は彼女の亡骸の前で涙を流してこう言っていた。
『―――ごめんね。君を殺してあげられなくて』と」
要するに、それは切嗣が彼女に自分を殺してほしいと言われたということだ。
そして、切嗣はそれを拒んだ。その結果として全ての村人が死んだ。
彼があれだけ全てを救おうとする行為を否定したのはこういった過去があったからなのだ。
そう考えるとはやての心は重い重しが載ったように苦しくなる。
「もしかしておとんは……その人のことが好きやったかもしれんなぁ」
「そうかもしれないね。唯一殺せなかった女性……そしてそのせいでより多くの被害が出た。『全てを救おうとした愚かさの代償は全てを失うことだ』そう、彼は言っていたよ」
重々しい空気が流れ、二人そろって紅茶を啜る音だけが部屋の中に響く。
その中で先に動いたのは話を終わりにする義務を持つグレアムの方だった。
「それからの彼は孤独のまま走り続けた。鬼のように仕事に取り組んでいった。もう誰も悲しませ
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