黒主学園、開校。
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「あ、可愛い」
微笑んで、小さな羽根をつつく。
親指サイズの折り鶴だ。
遊ぶ私の横で子供かよ、と鷹宮先生が呟き――何故か慌てて私の腕を掴んできた。
「な、何?痛いですっ!」
驚く私を余所に、鷹宮先生は私の手の中の折り鶴を凝視している。そして私の顔を見て、含み笑った。
痛いと訴えているのに先生は私の腕を離す事なく、引っ張るような形で私を席から起立させ、自分自身も手を挙げて起立する。
「理事長、早速一人決まりました」
「ん?」
鷹宮先生が特別声を張った訳でもないのに、遠くのステージに立つ理事長が反応を見せる。
ホールに集まっている全員の視線が集まるのを感じる。
普通科も、夜間部も。
「彼女が桃色の折り鶴を引きました。風紀委員の一人は彼女、宇佐美姫羅さんで確定です!」
「何だってえ!?」
「はいッ!?」
マイク音声である理事長と私の声が重なる。
突然の鷹宮先生の宣言を聞き、私は固まってしまう。状況が飲み込めない。
ホール内も怖いほど静まり返っている。
――私が、風紀委員に?
「……たかみや、せんせい」
「何だ」
「風紀委員って何ですか……」
「……俺の記憶違いじゃなければさっき説明したと思うんだがな」
そう言って、鷹宮先生は私の身体を抱き上げる。
「え、やだ……ちょっと、嘘…!」
ややあって、やっと事態を把握出来た。
全身からサーッと血の気が引くのを感じ、私は鷹宮先生の腕の中でめちゃくちゃに暴れる。
「む、無理ですっ!私に誰かの警護なんて!私は頭も良くないし運動神経も良くないし――」
「暴れるな。落とすぞ」
……低い声での脅しに、私はぴたっと動きを止めた。
鷹宮先生って顔もだけど言う事も怖い。
静かになった私を軽々と持ち上げながら、鷹宮先生がふっと笑う気配がした。
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