第八話 少女アニエス
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思わず、アニエスは足を止め空を見た。
空は雲ひとつ無く太陽が燦々と輝いているのに何処からとも無く霧雨が降り注いだからだ。
言うまでもなくマクシミリアンの殺菌殺虫魔法だがアニエスの知るところではない。
(なんて気味の悪い天気)
近くの家の軒下で雨宿りしようと足を進めると、一番会いたくない人とばったり出くわしてしまった。
「あ」
「ああ、アニエスか」
養父のミランだった。
思わずアニエスは口をつぐみ目をそらす。
「こ、こんな所で偶然だな」
一方、ミランも杖に体重を掛け、腫れ物に触るかのようにアニエスに話しかける。
「・・・・・・」
黙り込むアニエスにミランは何かと話題を振るが、のれんに腕押し・・・その全てを沈黙で返される。
(わたしなんて放っておけばいいのに)
アニエスはミランを本気で嫌っている訳ではない。
(メイジは敵だ。敵でなくてはならない)
自分自身に暗示を掛ける様につぶやく。
ミランの様な奇特なメイジは希少だ。
何時しか、アニエスはメイジを憎む事で心の平静を保っているという面倒な状態になっていた。
だが一方で、アニエス自身もミランの様なメイジは滅多にいない事も理解していたため、アニエスの心の中ではメイジへの憎しみとミランへの謝罪と後悔でぐちゃぐちゃになって、混乱にさらに拍車をかけていた。
(いっそ、そこら辺にいるメイジと同類なら、こんな思いしなくてすむのに)
霧雨はいつの間にか止んでいた。
☆ ☆ ☆
ミランこと、ジャン=ポール・ド・ミランは、魔法衛士除隊後は王太子の魔法の家庭教師的な地位だったが。
その忠勤振りからマクシミリアン直属の家臣になり、シュヴァリエに復帰、ジャン=ポール・シュヴァリエ・ド・ミランに名を改めた。
家臣になった頃からマクシミリアンの魔法の授業は水魔法にみに変更しており、しかも水魔法の授業のほとんどの時間は秘薬作りになってしまった。
たまに剣の修行があるぐらいで、割と暇になってしまったかと思われた。
しかし、ミランに息つく暇はなかった。
今度は優秀な人材を捜索する仕事が舞い込んだからだ。
おかげで家を空けることが多くなったが、妻のマノンは程好く実った胸をたたいて。
「家の事は任せて!」
と、元気良く送り出してくれた。
マノンとの間にはまだ子供は授かってないが夫婦仲は大変良好だ。
夫婦仲こそ良好だが、問題が無いわけではない。
数年前に引き取った養女のアニエスの事だ。
引き取った当初からミランには中々懐こうとせずミランの憂鬱にさせた。
マノンには良く話しかけているのを見かける
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