第八話 少女アニエス
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気ない』と半ば無理やり押し付け、アニエスも仕方なく付き合うことにした。
「この空き地で何やってたんだ?」
「何って、身体を鍛えていたのよ」
「身体を? 何で?」
「・・・別に、貴方には関係ないでしょ」
「え?」
「言いたくないの」
「あー・・・ええっと」
「・・・・・・」
「うん、確かに・・・もう聞かないよ」
何やら危険な雰囲気を感じたマクシミリアンは引っ込むことにした。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
会話が途切れて沈黙が空き地を覆った。
人があまり寄り付かない事もあって遠くで人々の喧騒が聞こえる。
(どうしたものか)
と、いろいろ思案していた所。
「・・・ごめん」
アニエスが謝って来た。
「え? アニエス?」
「・・・本当に言いたくなかったから。ごめんなさい」
「あー・・・何だ、僕も気にしてないから」
「うん、ありがとう」
「人間、誰しも秘密があるものさ。ま、いいって事よ」
こういったやり取りで微妙な雰囲気も何処かに吹き飛んでしまった。
その後、黒パンも食い終わり二人はいろいろと駄弁っていると。
「もう帰るよ。ナポレオン」
そう言うとアニエスは立ち上がりパンパンと尻を払う。
「あら、もう帰るのか?」
「まぁ・・・ね、ナポレオンもこんな所で油を売ってたら、店の人に怒られるんじゃ?」
「おおっと、それはいけない。僕もそろそろ仕事に戻らないと」
「それじゃ、ナポレオン、また会えるかな」
「そうだね、きっと会えるよ」
「うん、わたしはこっちだから・・・じゃあね」
そう言って、アニエスは走り出し路地裏へと消えていった。
「・・・・・・」
再び静寂が空き地を覆った。
「・・・またな、アニエス」
ぽつりをつぶやくと、空き地の隅っこに置いてある木箱へ足を進め、無色透明の液体が入った秘薬瓶を取り出した。
(だいぶ時間を食ってしまった。今日はまだ寄る所があるから早いとこ済ませてしまおう)
今度は川の側まで進んで秘薬瓶の栓を抜くと、たちまち白い煙がもうもうと吹き上がった。
次にマクシミリアンは秘薬の中身を川に流して、何処からとも無く杖を取り出しルーンを唱え始めた。
「イル・ウォータル・・・」
イメージはトリスタニアに降り注ぐ霧雨。
(王宮の噴水や他の水場の水量ではトリスタニア全体を補えないから・・・ね)
そうしてルーンを唱え終え、杖を天高く掲げた。
すると川の流れがピタリと止まり、次に止まった川から大量の『靄』の様な物がトリスタニア上空まで上って行き空を覆った。
靄はやがて霧雨に変わり、トリ
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