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ヴァンパイア騎士【黎明の光】
黒主学園、開校。
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「……さっきの男、白い制服だったよね」



入校式の最中。
理事長の長い長い挨拶を聞くのにも飽きて、欠伸を噛み殺すようになってきた頃、隣の席の凛ちゃんが私に囁いた。


「さっきのって?」
「ほら、姫羅がぶつかった男!」


言われて、さっきの綺麗な男の子を思い出す。
一本一本線が細い蜂蜜色の髪。透き通ったアカシヤ色の瞳。
美し過ぎる風貌にばかり意識が向いてしまっていたけれど、言われてみれば確かに白い制服を着ていた気がする。

何となく身を屈め、私は凛ちゃんに尋ねた。


「それがどうかしたの?」
「なんか……妙じゃない?」
「何が?」



凛ちゃんはある方向を指差す。
そちらを振り返ると、白い制服を身に付けた男女たちが座っていた。
私と同じく理事長の話に飽きてしまったのか眠っている人で溢れていたけど、誰を見ても容姿端麗で目を奪われるような人ばかりだ。



「あれ、夜間部だよ」
「夜間部……?」

「……あんた、ちゃんと入校式用のパンフレット読まなかったの?」
「……えへ。校舎と制服の写真しか見てない」



私の回答を聞き、凛ちゃんはがくっと肩を落とす。
しかしすぐに気を取り直したのか私に向き直ると、先程より声を潜めて【夜間部】について語り始めた。


「黒い制服が普通科で、白い制服が夜間部――要は定時制のクラスって事よ」
「ああ……」


凛ちゃんの説明を聞きながら私は頷く。
なるほど、そういう差があるのね。

そして睡眠中の彼らに気付かれないよう、また夜間部専用と思しきブースを見上げる。
夜間部が定時制なら、普通は制服の色逆だと思うんだけど。……夜だと白の方が映えるからかな?

どうでもいい疑問を抱く私に、凛ちゃんがまた耳打ちをする。



「なんか気味悪くない?あの人たち」
「え、どうして?」
「なんか、なんて表現したらいいかわからないけど……うーん」


優秀な凛ちゃんが珍しく困っている。
綺麗な黒髪に手櫛を通すように指を絡めて、彼女は低く唸った。
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