19.プロローグがはじまる
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う答えた。鈴谷とおばあちゃんの、孫ほど年の離れた友情は今後も続くようでなによりだ。
一方の霧島も、サラリーマンから渡された名刺を眺めている。表情はなにやら神妙だ。
「霧島はどうしマシタ?」
「いやぁ……お姉様、私達、元艦娘じゃないですか」
「いえーす」
「あの人、普通の人じゃないですか」
「いえーす」
「いいのかなーって。普通に友人になっても大丈夫かなーって思いまして」
「んー…霧島が何を心配してるのか分からないデスケド、心配なら鈴谷を見てみるデス」
私と霧島は、鈴谷を見た。鈴谷はおばあちゃんからもらったお漬物の蓋を開け、周囲にお漬物の匂いをまき散らしながら、ほくほく顔でそれをつまみつつ、おばあちゃんの住所を眺めている。私たちの視線に気付いた鈴谷は、しばらく私たちと顔を見合わせた後、申し訳無さそうな表情でお漬物を私たちの方に差し出しつつ……
「……独り占めしてごめんなさい。食べる?」
私と霧島は顔を見合わせ、吹き出した。鈴谷は意味がわからないといった顔をしている。
「ぇええ〜ちょっと何なの鈴谷意味わかんないんですけど!!」
「ブフッ……なんでもないデース……」
「いやいやいや何でもなくないでしょ金剛さん!」
「ホント、なんでもないから安心していいわよ鈴谷……オフゥッ」
「ぇえ〜なんなのちょっとぉお〜!!」
「ね。心配はいらないネ! 鈴谷みたいに簡単に考えるデース」
「ですね。お姉様」
「ちょっとマジで意味わかんないんですけどぉお!!!」
おばあちゃんのお漬物の匂いを充満させたバスは、盛り上がる私達3人を乗せながら、のんびりと駅までの道のりを走っていた。
私は、やっと前に進む準備が出来たと思う。あの日から私は、自分で自分に重い咎を背負わせていた。最愛の男性を守ることも出来ず、最愛の妹を自身の不始末から死なせてしまったことで、完全に前に進む力を失っていた。
私はあの日から昨日まで、自分のことを罪深い愚かな女だと思っていた。この自分への罰の念は、赤黒く濁りきったヘドロのようなものとなって、私の心と体を侵しきっていた。今なら分かる。私は、自身が前に進むために必要な力を、自分自身で拘束していた。赤黒いヘドロ状の罰の意識は私の心と体を固め、前に進ませまいとしていた。前に進むことを自ら拒否していたのだ。
それを昨晩、比叡と榛名が洗い流してくれた。私に対し、『あなたが生きていればいい』と許してくれた。そうして私の心と体を縛っていた罰のヘドロは、私から剥がれ落ちた。
そして、提督。
彼は、私を愛してくれた。そして、『前に進め』と私に叱咤してくれた。
―おれは金剛を永遠に愛している。
でも続きは、金剛がおばあちゃんになってからにしよう
彼は確かに
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