18.謝罪と懇願
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けではない、かなりしっかりした発音で私を呼んだ。
「……起きてたんデスカ?」
「いえ……ついさっきまで寝てました。お姉様は?」
「ワタシは、さっきまで広縁で涼んでマシタ」
「そうですか」
ひどく淡々とした受け答えのように感じた。霧島は元々理知的に会話をする子だが、決して無愛想ではない。非常にウェットで温かく、時に愉快さすら感じる話し方をする子だ。それなのに今、霧島は非常に淡々とした話し方をしている。
「お姉様。夢を見ました」
「夢?」
「はい。比叡お姉様と榛名の夢です」
「……二人は、何か言ってましたカ?」
「金剛お姉様を頼むと」
「そうなんデスネ……」
「……お姉様には?」
「ワタシのことを憎んでないと」
「そうですか……」
恐らく、霧島は直感で私も二人と会っていたのが分かったのだろう。霧島は黒霧島のボトルを枕にして仰向けに寝転んだまま、天井をずっと見ていたのが分かった。
その後しばらくの間、私と霧島の間に沈黙が流れた。嫌な沈黙ではない。私と霧島の間に言葉はなかったが、少なくとも昼間の時のような、心に痛い沈黙ではなかった。とても心地のいい、私と霧島の間にだけ許された、とてもフラットな空白だった。
しばらくして、霧島は上半身を起こした。部屋の中は暗がりだったが、霧島が微笑んでいるのが分かった。
「寝ましょうか。お姉様」
「そうデスネ。明日は帰りますしネ」
「ええ。鈴谷も寝てますしね」
なんだかこのやりとりだけで、私と霧島はすべてを察しあった気がした。霧島がどう感じているかは知らないが、私は、霧島がすべてを察してくれたと理解した。
やはり霧島は、私の自慢の妹だ。そして、比叡と榛名も私の自慢の妹だった。
そして彼は、最期に私を愛してくれた。
ありがとう比叡。ありがとう榛名。そしてありがとうダーリン。
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