18.謝罪と懇願
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彼だった。
「テートク……」
比叡と榛名は、笑顔で私のそばから離れた。榛名がちょっとだけ悔しそうな顔をしていたのは、私の気のせいなのか、それとも本当に悔しいのか分からなかったが、その後二人は、静かに消えていった。
彼に似た星空の下で、私は彼と会えた。彼が私の前からいなくなったのはほんの少し前の話のはずなのに、もう何年も会ってなかったような、不思議な懐かしさがあった。
「テートク……あれから鎮守府はなくなったヨ……」
私は彼の顔をまっすぐ見据えた。彼は私にしか見せない、私が大好きな、あの優しい笑顔をして、私の話を聞いてくれていた。
「テートクのお気に入りの球磨は海軍に残りまシタ。テートクが一番気にしてた木曾もテートクの仇を取るって言って残りまシタ。青葉はジャーナリストになるらしいデス。テートクたちの死に責任を感じてマシタ」
彼に報告したいことはたくさんあった。話していくうち、涙が溢れてきた。また彼と話が出来るのがうれしかった。彼に事の顛末を伝えることが出来ることがうれしかった。私は涙をこらえることが出来ず、泣きながら、鎮守府のみんながその後どういう道をたどったのか説明した。
彼は静かに私の話を聞いてくれた。笑顔で見守ってくれた。
「五月雨も最初は酷く落ち込んでたケド……今はテートクが守った子たちを守るために、海軍に残ったヨ。五月雨はワタシと違って強い子ネ」
不意に彼が、私の頭を撫でてくれた。待ち焦がれた感触だった。初めて撫でられた時の、全身がポワッとし、フワフワと中空を漂うような心地いい感触が私を包み込んだ。
「テートク……テートク……」
あの日のように、私はもう我慢が出来なかった。私は彼にしがみつき、彼の胸に顔を埋め、子供のように声を上げながら泣いた。
「逢いたかったデス……テートク!!」
彼は私を抱きしめてくれた。いつかのように優しく、だけどあの時以上に力強く、私の全身をしめつけるように、私の全身に自身の感触を残すかのように、強く強く私を抱きしめてくれた。
「愛してマス。ワタシはあなたを愛してマス」
彼は笑顔で優しく頷いてくれた。
「大好きですテートク。ダーリン愛してマス」
彼は苦笑いを浮かべながら、それでも優しく頷いてくれた。
「もっと撫でて……もっとワタシに触れて……ワタシを抱きしめて下サイ」
彼は笑顔で私の頭を撫でてくれた。髪に優しく触れ、手を握り、さらに力を込めて私を抱きしめてくれた。
彼の動きの一つ一つに、私の心が喜びで震えた。私の全身が彼を求めた。触れる度、撫でられる度、抱きしめられる度に、私の身体がさらに彼の感触を求めた。彼の手を求め、彼の肌を求め、彼の愛を求めた。彼に強く抱きしめられた痛みすら
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