■■SAO編 主人公:マルバ■■
ありふれた冒険譚◆初めての絶望、そして希望
第十五話 絶望、そして
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ギインッ!
テツオの前に踊りでたサチは敵の攻撃をなんとか受け止めた。背後のテツオのHPゲージは既に赤く染まっている。
「テツオ、しっかりして!このままじゃ全滅だよ!!」
全滅、という恐ろしい予想を口にするサチもやはり恐怖を隠せず手元が震えている。
私がここで死んだら……盾がいなくなる。もう一人の盾役のテツオはHPを消耗していて次の攻撃を耐え切れないだろう。そうしたら最後だ。みんな死んでしまう。
みんなが……死ぬ?そんなこと……させない!私が守ってみせる!!
サチは盾として皆を守る義務がある。敵を見据え、再び盾と剣を構えなおす。敵が一撃を放つ、それをしっかり防御してからの一撃、基本技の『スラント』。基本技ながらそれはダッカーとテツオが苦戦していたゴーレムの一体のHPを削り切ることに成功した。周囲に眩い消滅エフェクトが散る。そのエフェクトを見て更にテツオは恐怖した。自分もあと少しでああなるところだったのだ。
もはや隊列は意味をなしていなかった。前方を支えるのはHPバーを四割ほど減らしたサチ一人。そのすぐ斜め左後方にササマル、長槍の射程範囲より内側に敵を入れないよう、硬直の少ない基本技ばかりで応戦する。その距離が功を奏し、まだHPは八割を保っている。右側を支えるのはダッカー。短剣の武器防御で敵の攻撃を弾き、隙ができれば比較的硬直時間の短い体術で攻撃。『閃打』のみなら硬直はコンマ一秒にも満たないし、『双牙』でさえせいぜいコンマ五秒だ。攻撃は最大の防御との言葉通り、彼もまだHPは七割を少し切ったところだ。
そして三人に囲まれるようにして回復待ちをしているのがHP残り一割のテツオ。完全回復までに三分ほどかかるため、その間は仲間の戦いを見ることしかできない。
この絶体絶命の状況下にも関わらず……いや、だからこそなのかもしれないが、テツオが戦闘不能になってからサチの動きが目に見えて速くなった。
生物は絶体絶命の状況に陥ると、戦ったり逃げたりする力が飛躍的に上昇する。これは《闘争か逃走のホルモン》と呼ばれるアドレナリンの効果で痛覚が麻痺したり血液供給が増えるからだと言われている。おそらくサチの現実の心臓は激しく脈動し、大量の血液を彼女の脳に送り込んでいることだろう。
理屈で考えればSAO内部での行動の速さは“考える速さ”に完全に依存し、痛覚の麻痺だの血液供給の増大だのは全く関係がないはずだが、この状況下において彼女の力は明らかに強くなっていた。
――――敵の動きが遅く感じる。敵が振る武器の軌道が分かる。
サチは盾を振るい、敵の武器を跳ね返すと、袈裟斬りした剣を鋭角に切り返した。まだ習得して間もないため実戦で使うとは思わなかった技、『バーチカル・アーク』。剣を振り切った態勢で硬直すると、敵
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