第一部
第二章 〜幽州戦記〜
八 〜人、それぞれの想い〜
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と程遠志は討ち取りました。ですが、韓忠はともかく、程遠志は将を討ち取ったのみ。賊軍そのものは、董卓殿がおらねば手に余っていたでしょう」
「土方殿はこう仰せだが、どうなのじゃ? 月」
「はい。確かにお手伝いはしましたが、それも土方さん達が程遠志を討ち取って、賊軍が混乱していたからこそ、です。そうでなければ、数で劣る私の軍では、少なくない被害を被ったでしょうから」
「諦めよ、土方殿。貴殿が並の男ではない、それで佳いではないか」
佳い……のか?
「はっはっは、佳きかな佳きかな……う、ゴホゴホ」
「……大丈夫?」
不意に咳き込んだ丁原の背を、呂布がさすった。
「おじ様……。やはり、お身体の具合が宜しくないのでは……」
董卓が、顔を曇らせる。
「何、ワシも老いたという事よ……ああ、恋。済まんな」
「……親父。無理、ダメ」
「そうですよ、恋さんの言う通りです」
「いやいや、こんな老いぼれでも、まだまだ休ませては貰えんのじゃよ。賊がこのように跋扈する有様では、な」
「とにかく、横になって下さい。土方さん、申し訳ありませんが」
「いや、拙者にはお構いなく」
董卓と呂布に付き添われ、丁原は天幕へと入っていった。
……事情はわからぬが、少なくともこの世界では、董卓と丁原が争う事はなさそうだ。
そして、呂布も……あの、叛服常ならず、という印象は受けなかった。
董卓もまた、呂布を利で釣るような人物とも思えぬ。
私が取るべき道……判断を誤ると、従ってくれた皆に申し訳が立たない。
人物の見極め、今少し学ぶとしよう。
戦場の事、軍略の事は、皆に任せればいいのだからな。
その夜。
「ご主人様。今日の調練の成果、以上となります」
「うむ。やはり、脱落者がかなり出たようだな」
「はい。ですがその分、精兵を集める期待にもつながるかと」
愛紗が中心になり、調練の報告を受けた。
初対面の時にあった脆さや頼りなさが影を潜め、将としての自覚が芽生えてきた気がする。
「うえー、疲れたのだ……」
「どうした、鈴々。その程度で音を上げていては、明日は務まらないではないか」
「でも、華雄が張り切り過ぎなのだ。星は、そう思わないのか?」
「…………」
「にゃ? 星、聞いているのか?」
鈴々の声に、星がはっとした表情をする。
「どうした、星? ぼんやりするなど、お前らしくもない」
「い、いえ……。何でもありませぬ」
何故か、私と目を合わせようとしない。
「少し、疲れたようです。先に、休ませていただきますぞ」
そして、さっさと天幕を出て行った。
「星、何だか様子がおかしいのだ」
「そうだな。しかし、体調が悪いとは思えないが……。ご
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