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歌集「春雪花」
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 行き過ぎし

  時ぞ虚しく

    眺むれば

 雪ぞ降りたる

   憂きし里かな



 ささやかな時間だけを残して彼は帰った…。

 時間は止まることを知らず、私の想いなど関係なく…ただただ前へと進むだけだ…。

 うつろう時を眺めれば、もう一月も半ばになる。

 次はいつ…彼に会えるのだろうと考えて外を見れば、一面雪に覆われた淋しい風景がそこにあるだけであった…。



 恋しさに

  堪えて忍べば

   雪影に

 幽かに落つる

    夜半の月かな



 夜も更けて空を見れば…淡雪の降る中にうっすらと月の光が見えていた…。

 まるで…遠く会えない彼のような月…。
 姿は見えず、光だけが微かに届いている…。

 その幻想的な景色は…私の心を締め付けて、彼への想いを深くした…。

 あぁ…彼が愛しいのだと…。




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