第九十五話
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の開始だ。いつも愛用している日本刀ではなく、小ぶりなハンマーを持って肩に乗せ、一息深呼吸。机の上に乗せた大型のインゴットを撫でてその材質と出来映えを確かめた後、思いっきりハンマーを叩きつける。
アインクラッドの時から大元のシステムは変わっていない。対応するインゴットを専用のハンマーで規定の回数叩き伏せ、あとはシステムスキルによる補助や運などによって最終ステータスが決定し、武器となってこの世界に生まれてくる。……タルケンには『スキルレベルが上ならいい』などと言ったが、インゴットを叩く回数、事前準備の方法、追加アイテムや素材など様々な要因が存在する。その無限にも近い解法はまだ解明できていないほどであり、ただスキルを上げてインゴットを叩けばいい、という訳ではない。
……もちろん、補助スキルがあればあるほどいいのも確かではあり、最終的には運という説も否定出来ないが。
「………………」
さっきまでの騒がしさが嘘のように、リズベット武具店の工房は静まり返っていた。もちろんクラインも、本当に真剣な様子でハンマーを振るショウキに、何かちょっかいをかけるような事をする訳はなく。ただただカン、カン、と金属と金属がぶつかる小気味よい音が世界に響いていき、インゴットは鈍く、しかし確かに光り輝いていた。
そして何回叩いたか――一瞬、一際大きな光を発したのを見逃さず、ショウキはハンマーを振るうのを直前で止める。ハンマーを机に置いて一息、汗を拭うような動作をした後に、ショウキは見学していた三人に向き直った。
「……出来た」
その声に呼応するかのように、ただの無骨な鉄の塊にすぎなかったインゴットが、光とともに洗練された武器へとその姿を変えていく。ショウキが使ったインゴットの通りに、重厚な質量を持ち、人間の身長ほどにも迫る長さを持っていた。持ち手は力が入りやすいようになっており、造り手のこだわりか黒い意匠が施されている。目測だが刃渡りは90cmを超えるほどの――
「――カタナじゃねぇか!」
――野太刀、あるいは大太刀。厳密には違うが斬馬刀、などと呼ばれる巨大な日本刀の一種がそこにあった。クラインの渾身のツッコミが、静寂が支配していた工房に響き渡った。
「くっ……ダメか……すまないテッチ、実は俺には昔やったゲームのバグの影響で、カタナしか造れないバグが……」
「おい、それはまた別の話だろおめー」
胸を抑えて苦しみだすような動作をしだすショウキを、当時の事情も知っているクラインがバッサリと斬って捨てる。しかして、何故か造るもの造るものカタナになってしまうのは、わざとという訳ではなく。本人さえもその理由は分からなかった。
「確かに凄い勉強にはなったけど……テッチ、いるコレ?」
「遠慮しておこうかな」
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