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SAO−銀ノ月−
第九十五話
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降り立った。……ちょっと寂しそうな飼い主は置いておいて。

「ユウキ。せっかく作ったのに冷めちゃうわよ?」

「アスナさんの料理、すっごく美味しいんですよ!」

「うん、今行くよ!」



 ――憧れの人。大事な人を自分のせいで亡くしたあのデスゲームにおいて、生き残る力をくれた恩人。中層のプレイヤーだった自分と、攻略組の中でもトップをひた走っていた彼では、一度も会うことはなかったけれど。第一層からフロアボス攻略組にその名を刻んでいた、《黒の剣士》の名を聞く度に――生き残ることが出来るって信じられた。

 デスゲームを生き残る強さを得られると、戦闘スタイルを真似てみたりしていたが――あのデスゲームを終え、そんな憧れの《黒の剣士》が目の前にいる。まずお礼を言うべきか――いや会ったこともないのに――真似てみた二刀流について聞くべきか――いやまずは挨拶を――と、ルクスの脳内で様々な言葉が駆け巡っていく。

「え、えと……」

 結局、口から出てくる言葉は言語にならず。怪訝そうにしている目の前の人にガッカリさせまいと、また何か言わないと、と思考がグルグルと回転していく。そう、まずはこの非礼の謝罪をしなくては。

「ご、ごめんなさ――」

「――カーァット!」

 ……リズベット武具店。ステレオタイプの映画監督が持っている、音を鳴らすカチンコと呼ばれる物を鳴らしながら、店主ことリズ監督はそう叫ぶ。

「カットカットカット! ルクス。そんなんじゃいつまでたっても、キリトと会話すら出来ないじゃない」

「……すまない……」

 わざわざ鍛冶スキルを駆使して作ったカチンコをカンカンと鳴らしながら、椅子に座って膝を組んだリズが、主演女優ことルクスに野次を飛ばす。申し訳なさそうにルクスは萎縮するものの、やはりどうすることも出来ず。

 アインクラッドの時からキリト――というより《黒の剣士》に憧れていたルクスだったが、いざ直接会うと恥ずかしくて喋れない、ということで。同じ学校に通っているにもかかわらず、二人の接触は異常に少ない……ルクスが逃げるからであるが。これではマズいとリズが一肌脱ぎ、どうにかしてキリトとまともに会話出来るように一計を案じたものの、上手くいく様子はまるでなかった。

「あー……もういいか? このカツラくすぐってぇんだけど」

「ごめんねジュン。もうちょっと頼むわ」

 主演男優には本物のキリトを起用――したいところだが、そうすると主演女優が逃亡してしまうため、体格や髪型が近いジュンにお願いした。サラマンダーらしい赤色の髪は黒色のカツラに包まれ、服はキリト本人のいつも着ているものの予備と、一見在りし日の《黒の剣士》に近いものがある。

「つってもこの調子じゃなぁ」

「すまない……
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