第九十五話
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ルクスとユウキが優勝を果たした水着コンテストからしばらく、そろそろ年末が近づいてこようとしていたが、このアルヴヘイム・オンラインは変わることはなく。……いや、変わったことと言えば、水着コンテストで会ったギルドこと、スリーピング・ナイツのメンバーたちか。
それぞれ一騎当千の力を持った、他のゲームからコンバートしてきたプレイヤー集団。ALOのことを知りたい、という彼ら彼女らとともに時には冒険を果たし、それ以外でもそれぞれに交流を深めていた。
ALO――イグドラシル・シティ。苛烈な競売を乗り越えて買われたその一等地には、今はキリトたちの住居となっていた。アインクラッドが実装された今、ここは間に合わせのプレイヤーホームではあるのだが……そうとは思えないほど立派な家となっている。ついつい競売に夢中になって買った夫と、それを飾り立てた妻の仕業だが。
そんなこともあり、パーティーの集合場所といえばたいていはこの家か、クエストに行くならば《リズベット武具店》だ。つまるところ、クエストに行かないでのんびりとするだけなら、大抵の場合この家であり……今日もその例に漏れなかった。
「アスナ! 何か手伝えることない?」
「ううん。お客様だからゆっくりしてなさい」
そんなこんなでキッチンで料理の腕を振るうアスナに、ユウキがせわしなく手伝おうとするものの、その度に制止され椅子に座るとプルプルと震えだす。
「や、やっぱりボクも何か――」
「ダメです!」
数秒後、我慢出来なくなったユウキが立ち上がろうとしていた時、机に食材を運んできたユイに制止された。ナビゲーション・ピクシーの姿ではなく、少女の姿をしたユイに注意されるのは効いたのか、またもやユウキはしぶしぶ椅子に座り込む。
「むぅ……」
「なんでそんな落ち着きがないんだ?」
同じくアスナが作った料理を机に運んできたキリトが、ユイとともに椅子に座りながら、落ち着かない様子のユウキに問う。軽くつまめるような料理が机に並び、ユウキはそれらの料理を視界に捉えながら、ぼそぼそと語りだした。
「だって……ボク、こういうの初めてだし……」
友達の家にお呼ばれするなんて――と、消え入りそうではあったものの、ユウキの言葉はそう続いていく。その言葉を聞きながら、アスナは手を拭いてキッチンからユウキの隣の席に座る。
「ならこういう時は、遠慮しなくてもいいの。手伝ってくれようとしてくれてありがとね?」
「そうですよ!」
「……うん」
アスナとユイの二人にそう言われると、少しだけ頬を赤く染めながら、ユウキは小さく頷いた。そんな様子を見ると、アスナはふとあることを思いつき、クスクスと笑ってしまう。
「ふふ。なんだか娘が増えたみたい」
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