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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十九話 終結
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難しいと報告が有りました」
また溜息が聞こえた。誰も視線を合わせようとしない、俯いているだけだ。

大きく息を吐く音が聞こえた。トリューニヒトだった。ここ数日ろくに寝ていないのだろう、眼が充血している。
「已むを得ないな。宇宙艦隊には降伏するように伝えてくれ」
皆がトリューニヒトを見た。彼方此方から“しかし”、“それでは”という声が聞こえた。だがトリューニヒトが首を横に振ると皆が口を閉じた。

「これ以上戦っても犠牲が増えるだけだ。勝算が無い以上、無意味な戦いは止めるべきだろう。国防委員長、降伏するように伝えてくれ」
「……分かりました。ボロディン本部長に伝えます」
不思議なほど衝撃は無かった。来るべきものが来た、そんな感じがした。私は何処かでこうなる事を覚悟していたのだろう。いや私だけではない、皆もそうかもしれない、ホッとした様な顔をしている。

「それで我々は、政府は如何するのかね。降伏するのかな?」
私が問うとトリューニヒトが顔を顰めた。
「いや、アルテミスの首飾りが有るから無理だろう。今の時点で降伏すれば同盟市民が暴動を起こしかねない」
「では?」
「帝国軍が首飾りを壊してから降伏する。その方が無理が無いと思う」

確かにそうだな。同盟市民も諦めるだろう。
「帝国が同盟をどのように扱うかは分からない。劣悪遺伝子排除法を廃法にした事、改革を進めている事を考慮すれば酷い扱いにはならないだろうとは思うが確証は無い。我々は同盟市民の生命、財産を守らなければならない。そして民主共和政……。各委員長も同盟市民を守るためには何が必要なのか、纏めてくれ。自由惑星同盟は滅ぶかもしれんが講和条約でそれらを守るために私は粘り強く交渉するつもりだ」
力強い声だった。自らに言い聞かせるような響きが有った。



帝国暦 490年 4月 18日    帝国軍総旗艦ロキ  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



総旗艦ロキの艦橋は爆発した様な騒ぎだった。彼方此方で肩を叩き合ったり握手をしている人間がいる。おそらく帝国軍艦艇の彼方此方で同じ様な光景が起きているだろう。まあ気持ちは分かる。同盟軍が降伏した、そして同盟にはもう宇宙戦力は無い、これで同盟の命運は尽きたに等しい。皆が喜ぶのは分かるんだが……。

「閣下、おめでとうございます」
ワルトハイムが祝福してくれると皆が口々に“おめでとうございます”と言ってくれた。ヴァレリーも祝ってくれた。ホッとした様な顔をしている。両軍ともそれほど損害は多くない。一安心だろう。

「有難う」
何とか笑みを浮かべることが出来た。どうせならもっと早く降伏してくれれば良かったんだけどな。そうすれば犠牲はもっと少なくて済んだ。それに同盟政府はまだ降伏していない。なんか中途半端だ、戦闘も降伏も
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