16.提督はどこですか
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はじめ、私は木曾が何を言っているのか意味が分からなかった。来るな? 来てはいけない? 彼には会わせてくれない? なぜ? 私は彼に選ばれているのに? あの晩、木曾は私に彼を頼むと言ったのに……?
「……木曾、会わせて下サイ…テートクに会わせて下サイ!!」
「ダメだ。お前には見せられない」
「いやデス…通して下さい木曾」
「絶対に通さない」
「通してくれないなら力づくで通りマス!」
「それで気が済むなら、俺のことをいくらでも殴ってくれ。だがここは通さない」
「……木曾ッ!!!」
私は右拳を思い切り握りしめた。木曾が彼に会わせてくれないというのなら、木曾を力で排除してでも私は彼に会う。私は木曾を殴り飛ばす覚悟で、右手に力を込めた。
「……金剛さん?」
不意に、執務室の中から声が聞こえた。五月雨の声だ。壁が壊れドアが吹き飛び、執務室は私と木曾がいるこの廊下からよく見えるが、彼は恐らく私から死角になっているところにいるのだ。私がいる場所から彼の姿は見えない。
代わりに、五月雨の姿はよく見える。彼女は中腰で、床をジッと見つめている。
「五月雨?!! テートクはいますか?! テートクに会わせてくだサイ!!」
木曾が歯を食いしばった。サーベルは私に向けたままだが、視線を私から外した。彼女の歯ぎしりが、私にまで聞こえてきた。
「金剛さん…それが……」
「どうしたの?! 五月雨?! テートクはどうしたんデスカ?!!」
「それが…私、ドジっちゃったみたいで……提督、この辺に散らばっちゃったんです…探さなきゃって思って、探してるんですけど……」
「え……?」
木曾はサーベルを力なく下げた。目には涙が溜まっている。
「足元を見てみろ」
木曾にそう言われ、私は足元を見た。たくさんの瓦礫が真っ赤に染まり、小さな肉片が飛び散っているのが見て取れた。
「……球磨姉ぇから敵の砲撃のことは聞いたか?」
「き…聞きましたけど…それより…テートクは……?」
「最初の砲撃、執務室に直撃したんだ」
木曾は声を震わせ、怒りと、それ以上の悲しみを押し殺すように、潰れた喉から力づくで絞り出した声で、そうつぶやいた。
「金剛さん、その辺にありませんか? 手は見つけたんですけど…早く提督を元に戻さなきゃ……」
執務室で五月雨が大切なものをなくして困っている子供のような涙声でそう言っている。
「五月雨は……提督と一緒に執務室にいた」
嘘だ。
「五月雨は……あいつが砕ける瞬間、その場にいたんだ。あの様子だと、ひょっとしたらその瞬間を見ていたのかもしれない……」
嘘だ。
「お前には…お前にだけは見せるわけにはいかない」
「嘘デス!!」
私は木曾を突き
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