第十九話 夏ですその十一
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「受験勉強もしないといけないし」
「そういえば先輩高校卒業されたらどうされるんですか?」
「一応考えているのは進学よ」
つまり大学に行かれるということです。この場合は。
「天理大学。それが駄目だったら本部か詰所で働かせてもらうってことになってるわ」
「本部勤務ですか」
「ええ。その場合は多分詰所に住まわせてもらってね」
そういう方がおぢばには多くおられます。天理高校を卒業してそちらに入られる方も多いのです。私の知っている方でもそうした方がおられます。
「そう考えてるわ」
「天理大学だとまた御会いできますね」
「どちらにしろおぢばには残るわよ」
「そうなんですか」
それを聞くと。それだけで何か顔が綻ぶのが自分でもわかります。
「それはいいですね」
「ちっちともずっと会えるわね」
「はいっ」
答える声が上ずっているのが自分でもわかりました。やっぱりそれは凄く嬉しいです。
「ですよね、先輩とも」
「流石に一緒の部屋じゃないけれどね」
「あっ、そうですね」
寮だから一緒というわけで。そうじゃなかったらやっぱりです。一緒になることなんてないです。それが少し残念ではありますけれど仕方ないです。
「それは」
「それはそれだけれど会えることは会えるわ」
「ですよね」
「潤も一緒よ」
「高井先輩もですか」
「智子もね」
佐野先輩のことです。何かおぢばに三人も奇麗な人が残るんですね。本当に芸能プロダクションの人が帰ってきそうな気がします。
「三人共おぢばに残るわよ」
「そうなんですか」
「他の娘も残る娘多いし」
「実家には帰られないんですね」
「まずは仕込みだから」
先輩はこう私に仰いました。
「今はね。若い時に仕込めっていうじゃない」
「はい」
だから私も天理高校にいるわけで。それを考えたら実家から離れてここにいるのも仕込みなんです。何か随分と遊んでいるような気もしますけれど。
「だから今度のひのきしんもね」
「いいんですね」
「そういうこと。それでね」
「ええ」
「何かあったら私の詰所に来て。暫くいるから」
「わかりました」
先輩のその言葉に頷きました。
「それじゃあ。御願いします」
「ええ。それにしても暑くなってきたわね」
「そうですね。物凄く」
おぢばがえりの時なんかそれこそ壮絶で。いるだけで暑くなってしまいます。
「夏になったんですね、本当に」
「今年は海に行けないのが残念ね」
そう仰って寂しい顔になられました。
「受験だから」
「毎年海には行かれてるんですか」
「ええ。須磨にね」
神戸です。源氏物語で光源氏が左遷させられていた場所でもあります。私がこのことを知ったのは学校の授業からですけれどそれを考えたら凄くいい場所です。ここで源氏の君
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ