十一話:心
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まるで呪いの呪詛を吐くように叫びながら近くに無造作に転がる骸に近づく。
全てに怒りを向けているかのような形相とは反対に優しく仰向けに転がす。
ところどころ痛み、食い散らかされているがその顔だけは綺麗なままだった。
少年と青年に中間のようなあどけなさが残る少年だった。
「僕はね。幼い頃はこういう人達を助けたかったんだ。生きたくても生きられない、そんな弱い人達を」
「……切嗣」
死への恐怖からか開き続けていた瞼を閉じてやり、切嗣は少年の骸から離れる。
もしも、切嗣が子どもの頃に抱いた理想を持ち続けていれば、彼ははやてを助けようとしたはずだ。
日陰に暮らすしかない、死に行く運命を定められた弱者を。
だが、いつの間にか変わっていた彼は彼らに全ての代償を押し付けて殺そうとしていた。
どうせ死ぬのだからどれだけ残虐な行為をしても問題はないとでもいう様に。
既に光を得ている救う必要などない者達の利潤を守るために。
「でも、結局誰も助けようとしていない。人を救うと言いながら、守ったのは人ではなく自分の理想だけ」
「…………」
「当然と言えば当然の報いなんだろうね。今、こうして生きながらえているのも。いや、こんなことを言うのは彼らに失礼か……」
まるで生きることそのものが罰だとでもいう様に寂しげに笑う切嗣。
その笑みがどうしようもなくリインフォースの胸を締め付ける。
どうしてこの男は心からの笑みを浮かべられないのだろうと悲しくなる。
「分かっただろう。こんな僕が君達の家族を名乗るなんておこがましいことが」
「……では、私達はどうすればいいのだ? お前を家族だと思っている私は」
心の底から悲しそうに、捨てられた子犬のように寂しげに切嗣に問いかけるリインフォース。
切嗣が誰かの家族になどなれないと思うのは個人の自由だろう。
しかし、そうなってくると未だに彼を家族と慕うはやて達の気持ちはどうなるのか。
何よりも、彼と傍にいることで心に温もりを感じる彼女の気持ちはどうなるのか。
その問いかけに一瞬、意外そうな顔をする切嗣だったが、すぐに無表情に戻り吐き捨てる。
「忘れてくれ」
短く、たった五文字の言葉。
だというのに、リインフォースの心は引き裂かれたかのような痛みに襲われた。
そして同時に、余りにも身勝手な切嗣に怒りを抱きさえした。
何故、自分がこのような感情を抱くのかすら分からない。
しかし、何か大切なものが傷つけられたのは理解できた。
「悪いがそれはできない。私は一度記憶したことは忘れないんだ」
「僕みたいなろくでなしと過ごした嫌な記憶なんて早く忘れるに限るよ」
「……お前は時に私よりも余程機械
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