十一話:心
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あれからどれだけの地獄を見てきただろうか。
少しでも世界に平和が訪れることを祈って地獄を回って来た。
そこで行ったことはいつも同じ―――人殺しだけ。
苦しむ人達にただの一度も手を差し伸べることも、目を向けることもなく走り続けた。
その結果が今もなお間違えを犯し続ける愚か者の誕生だ。
「そう言えば、海に行くと約束していたな……」
切嗣は遠い記憶を思い出す様に目を細めて海を眺める。
平素であれば穏やかで美しい海だが、今はそこかしこに死体が打ち上げられ、鳥が死肉を漁っている。
近くで海戦があったのか、それとも空母でも沈められたのか。
そこまで考えて彼は皮肉気に笑う。自分がこの世界でするべきことは既に終えた。
何もできることはない。後はいつものようにここから去り、別の世界で殺しをするだけだ。
そんな事を考えていた時だった。ウーノから連絡が入る。
『衛宮切嗣、連絡があります』
「なんだい? そっちは僕の仕事とは関係がないはずだろう」
『今回は私情のようなものです。リインフォースがそちらに向かわれました』
「……何だって?」
若干苛立っていた表情はすぐに緊張した面持ちに変わる。
リインフォースが体を得てから数ヶ月が経過していた。
しかし、その間も切嗣は頑なに彼女を戦場には連れて行かなかった。
何度か彼女が連れて行ってくれと頼んできた時はすべて無視をしていた。
何が彼女を駆り立てているかなど分かりはしなかったが、それでいいと思っていた。
自分と彼女はすぐに無関係の他人になるのだからと。
「なんで許可を……いや、今どこにいるか分かるかい?」
『こちらではそこまでは分かりかねます。しかし、彼女は―――』
「やっと見つけたぞ、切嗣」
『―――あなたを探していましたので』
聞き慣れた声に切嗣は即座に振り返る。
案の定そこには悪戯が成功したように笑うリインフォースが居た。
―――何故、こんな危険な場所に来た。
そう口にする前に無事で良かったとホッとする自身の心に気づき唇をかみしめる切嗣。
感情を優先するなどあの時の二の舞になるだけだ。
『どうやら、見つかったようなので私はこれで失礼させていただきます』
通信を勝手に切り、消えるウーノに文句を言ってやりたい気分であったがそれを抑えリインフォースに集中する。
ここまで来たということは何か余程のことがあったのかもしれない。
何もなかったのだとしても今後はこのようなことはしないように言わなければならない。
切嗣は一度大きく息を吸い込み、口を開く。
「危険だから来ないように言っておいたはずだよ」
「私は人間だ。お前に行動の制限をされるいわれはない」
「だとしても、自らを危
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