暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第133話 アンドバリの指輪
[1/10]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 全体的に色素が薄い少女と言うべきであろうか。髪の毛は浅い紫。肌は透けるような白。真っ当な生命体としては考えられないような、ほぼ完全に左右対称と言える整った顔立ち。くちびるも、そして、その瞳の色も薄く……。

 いや、違う。それだけではない。
 そもそも、彼女はその存在自体が希薄。生物として其処に存在している事さえ疑われるような存在感。人間と言うよりも高位の精霊と言った雰囲気。高校でも、おそらく彼女の事に気を留めているのはハルヒ周りの人間以外ではあまりいないであろう。
 まるで皆から忘れられた彫像の如く、自らに与えられた席に腰を降ろし、ただ静かに本を読む少女。校内で能動的に動くのは俺と共に行動している時だけ……。クラスメイトたちはそう言う印象でしか彼女の事を覚えていないはずです。

 何故ならば、彼女自身が軽い穏行の術を自らに施しているから。他者にその存在を認識されないようにしているから。

「俺はオマエの事しか考えていないさ。正に誠実なることトロイラスの如しだ」

 少し、不自然な間を空けながらも、それでも答えを探し出した俺。
 ただ、これでは苦し紛れに返した感が強すぎる。そもそも、本当にこの台詞をトロイラスが口にした瞬間は、間違いなく本気――大真面目での台詞だったのでしょうが、今の俺の口から出ると本気と取られる可能性はゼロと言う口調及びタイミングでしかありません。
 たったひとつ、俺が彼女の事を拒絶した訳ではない。それだけが彼女に伝わってくれれば良い。そう考えて発した意味のない言葉。

 そう、結局、結論は先送り。感情を理性で完全にコントロール出来ない以上、これは仕方がない事。
 黙って有希やタバサを見つめるだけで心が騒ぎ、気付かぬ内に彼女らに手を伸ばしている。瞳は無意識の内に彼女らを探して仕舞う。こんな感情を簡単にコントロール出来るのなら、俺はとっくの昔に悟りを開いて新しい世界を創り出して居る。そう言う、かなり投げやりな気分で。

 もっとも、ほんの五分前まではハルヒの事を。
 三分前はタバサを。
 そして直前まで有希の事……と合わせて、ハルケギニアの湖の乙女の事を考えていたのです。これではどちらかと言うと、『不実なることクレシダの如し』と表現した方が良いかも知れない状況でしょう。

 但し、ハルケギニアから湖の乙女をこの世界に召喚出来ない理由は、彼女と有希が、時間軸が違うだけで、まったく同じ魂を持つ存在である可能性が高いから……。
 湖の乙女は、未来の長門有希である可能性が高い、と俺が考えているから――

 完全に密着させていた状態からは少し離れたが、それでも他の女性……タバサ以外には絶対に近付かせない距離に存在する彼女を見つめる。
 本当はこんな場面でも、シェークスピアの作品の中でも問題作と言われて
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ