彼女達の結末
三 重奏
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人、姉妹の一人を貪られた。そんな、虫へ、敵へと向けて。
「行くよ。もう、壊させたりしない」
「壊される前に、壊し尽くすわ。あなた達なんかに、大切な人をくれてなんか……やらないから!」
声と共に。打ち出された銃弾、弾け飛ぶ外骨格と飛び散る足。それを合図に、群れへと向けて地面を蹴る。
迫り来る虫、私へと向けて、リティへと向けて。飛び掛る虫を避け、擦れ違い様に斬り落とし。死角から迫る昆虫が銃弾に拠って弾け飛ぶ音を聞きながら、硬く鈍く光を放つ虫の甲を、腹を裂いて、裂いて、また、裂いて。引き抜く勢いに乗せて体を捻り、第三の腕で虫を薙ぎ。壊した虫は、数体、数十体。それでも。
数は多く。奏で続ける銃声、発砲音は、私の築いた躯の道を踏み越え、私の背後に。
「壁を背にしようと思ったけれど、駄目ね。壁を這って上からも来るわ。狙いを付けるのが難しい」
「なら後ろの虫を任せていいかな。出来れば、大きいのも。近付く虫はどうにかする」
「了解」
銃撃音は連続して地下に木霊する。虫の鳴き声は斬撃の音で掻き消して。無数の死骸と、死に損ない。暗緑色と、黒、茶色。毒々しい縞模様、斑。赤く輝き見据える眼球が銃弾を受けて弾け飛び、裂いた腹から零れ落ちる綿をまた裂き切り捨てて。
緑色の体液。耳障りな羽音の重なり。揺れる触角、出鱈目に生えた歪な足。切り刻んでは投げ捨てて、撃ち貫いては崩れて落ちる。狂騒は終わる事無く、私たちは、その中心にあり続け、奏で続け、舞い続け。けれど。
敵は減りつつあると言えど。戦闘の音を聞きつけてか、私たちの来た通路からまた現れる新手の虫、切りが無く。嗚呼。
守ると言ったのに。約束しあったのに。埒が明かない、この状況。焦り。何か、何か、活路は――
「此方ですわ!」
不意に。地下空洞へと声が響く。声のした方、見れば、其処には。
開いた扉。そして、黒髪。あまりに白い、白い肌の。一人の少女。
突然に響いた彼女の声、聞きつけたのは私たちだけではない。私たちの視線と共に、虫の矛先もまた彼女へと向かい。そして。
飛び出した虫が両断される。彼女の手に刃は無く。彼女の振るった指の先、線を引く煌き――それが数本の糸であると気付いたのは、切り落とされた虫が地面へと落ちる音と同時で。
「早く!」
少女の声に我に返り、リティの体を抱き上げる。予想しなかった助けの手。それを掴んで良いかどうかを考える時間などは無く。宙へ跳び、向かい来る虫を踏みつけ、また、跳び。糸を振るい虫を断ち切りながらも、私達が駆け出したの見届け、扉の奥へと戻り行く、少女の元へと駆け出して。
「マト!」
「信じるしかない! 彼女の所に行く!」
向かう先、小さな悲鳴は、私たちの問答と同時に。一体の、頭一つ抜きん出
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