6話 知りたくなかった絶望感(ディスペア)
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リヒの攻撃は基本的に格闘で、ナイフを使わなかった。
「カリヒ?」
クロノスは震えた声で問う。
「なんだい?」
カリヒは死体のような声量で返す。その声を聞いてクロノスは確信した。これは自分を甚振っているのだと。同時に相手はカリヒではないということも。
「カリヒじゃないな?」
思った事を問う。カリヒは首をふる。
「僕は僕だ。会ったばかりの君に何がわかる?」
カリヒの威嚇にも似たその声はクロノスの劣等感と恐怖心を煽った。
「確かに、さっきまでの僕と今君と戦っている僕は違うように見えるだろう。だって、さっきまでの僕は僕のことを知らないんだから!」
クロノスはカリヒから全力で逃げた。目の前に居るのは人間ではない。悪魔だ。彼は察知した。
「逃げるなよー。アメリカの精鋭さんが!」
クロノスが逃げたのには理由があった。ただプライドを汚したわけではない。味方、ルースフェルトとメリラのアラルとライフルでの援護射撃が来ることを知っていたからだ。
勿論カリヒは知らなかった。しかし、彼は鉛弾の飛ぶ位置を正確に把握し、避けながら駆けている。
「此処かぁ!?」
カリヒは弾道で援護射撃をしている人を見つけた。工場の2階だ。通常ハシゴしか上に行く方法がないのにもかかわらずカリヒは脚力で壁を斜めに駆け出し、降り注ぐ鉛の雨を躱し、とうとうたどり着いた。
「邪魔すんなよ!僕とクロノスの殺し合いをよぉ!」
カリヒの威圧に2人は怯んだ。そして彼は折りたたんだナイフをポケットから出し、開きながら接近し、ルースフェルトの臍に刺した。
「ルースフェルト!」
メリラは叫ぶ。しかし彼女には何も出来ない。カリヒはナイフを首辺りまで滑らせ、内蔵を吐き出させる。
「ねえ。君、名前はなんていうの?」
「来るな…」
メリラは弾が切れたアサルトライフルの銃口をカリヒに向け震えだす。
「こんにちは。アナザーカリヒさん」
リーナはハシゴを登って、カリヒ達が居る場所にやってきた。
「なんだ?リーナ?どうして此処に?」
「カリヒさんの奥歯に発信機が埋め込まれています」
彼女はカマをかけた。実際、発信機など存在しない。しかし、これをいうことでカリヒの反応を確認し、今の精神状態を把握し、1番いい策を練っているのだ。
「埋め込まれている?そんなはずはない。だって僕は主人格だ。もう1人の僕の体験や経験は僕に行き渡るはずだ!?」
リーナはカリヒの話を聞きながらメリラの頭を撫でる。そして耳元で、「もう大丈夫だよ」と呟いた。
「僕は人から尊敬されたかった。この考え方は、友達をなくす。だから僕は皆に慕われるように繕った。でも限界に達した。だから僕は人格を作った。人から信頼される人格を!」
侵蝕率90%。リーナに迫られた判断は
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