6部分:第六章
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第六章
「やっぱりな」
「いいって何が」
「こうして走れるってことがさ」
言うのはこのことだった。それを話すのである。
「一緒にさ」
「一緒に」
「だからさ」
また言う彼だった。
「よかったらだけれど」
「ええ、よかったら」
「これからも一緒にどうかな」
こう言うのである。
「ずっと一緒にな。一緒に走らないか?」
「一緒にね」
「そっちがよかったらだけれど。どうかな」
こう話してだった。そしてまた言った言葉は。
「一緒にさ」
「少し考えさせて」
先生は即答は避けた。その言葉の意味がわかっているからだ。だからこそ即答を避けてそのうえで言葉を返したのである。そうだったのだ。
「少しね」
「そうか。それじゃあ待ってるからさ」
「返答は絶対にするから」
「待ってるからさ」
こんな話をしてだった。数日経った。先生はその間ずっと無口だった。その無口な理由は考えていたからだ。津上の言葉への返答を考えてだ。
それで数日過ごした。考え続けてだ。出した結論はだ。
「私らしくね」
まずはこう一人で言った。
「私らしく。やるしかないわね」
こうしてそのうえでだ。津上に連絡をした。その日は週末だった。夜の街道レーサー達がよく使う山道においてだ。そこで話をするのだった。
左手にはカーブが連なる山道があり右手には白いガレージと海がある。海の上には黄色い満月がある。濃紫の夜がかなり美しい。
そこでだ。先生は津上に対して言う。二人はそれぞれライダースーツを着ている。
「決めたわ」
「決めたか」
「ええ、私らしく決めるわ」
こう津上に言うのである。
「私らしくね」
「らしくか」
「走りましょう」
津上にまた告げた。
「まずはね」
「走るか」
「ええ、走って」
最初はそれだというのだ。
「それから決めたいのよ」
「確かにらしいね」
それを聞いてだ。笑顔で言う津上だった。
「それは」
「らしいのね」
「じゃあ気が済むまで走って決めるか」
津上は笑顔で先生に告げた。
「今から。そうするんだろ?」
「そうよ。走ってそれで決めるわ」
先生はこう言ってヘルメットを被った。津上もだ。
手で合図をしてそのうえでだ。それぞれバイクに乗る。
それから二人で走った。夜の街道を朝まで気が済むまで走った。そのうえで出した答えはだ。
「いや、上手くいったよ」
「そうですね、本当に」
「本当に上手くいったよ」
校長先生は校長室で笑顔でだ。教頭先生に話していた。教頭先生は小柄で頭の禿げた人だった。その教頭先生に対して話すのだった。
「実にね」
「矢追先生も遂に結婚ですね」
「うん、何でもね」
「何でも?」
「御主人は郵便局員でね」
このことも話す。
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