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戦国異伝
第二百三十八話 幕府その一

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                 第二百三十八話  幕府
 信長は都に入った、もう都は完全に落ち着いていた。都の民達も信長が来たのを見て満面の笑顔で迎えて来た。
「おお、織田様じゃ」
「無事であったと聞いておったが」
「すぐに都に帰ってこられたな」
「これは何よりじゃ」
「全くじゃ」
 こう言って彼を迎えるのだった。
 そして信長の連れている者達も見てだ、こう言った。
「真田様のご次男もおられるぞ」
「直江様もな」
「森様もな」
「どなたもおられる」
「どなたも無事で何よりじゃ」
「全くじゃな」
「帝も公卿の方々も無事戻って来られた」
「後は焼け跡を片付けてね」
「どうにかするだけじゃ」
「まことによかったわ」
「本当にな」
 信長達の無事を喜んでいた、しかも話すのは彼等のことだけではなかった。その時共に京都にいた信忠のことも話していた。
「秋田介様もな」
「うむ、ご無事だったな」
「あの方も無事であられる」
「そのことも何より」
「織田様が天下を泰平にして下さる」
「こんなよいことはないわ」
「まことにな」
 織田家全体のことも話していた、その声を聞いてだった。
 信長は兼続にだ、微笑んでこう言った。
「よかったわ」
「民達が上様のご無事を喜んでくれていて」
「うむ、こうではなくてはな」
 それこそというのだ。
「わしも励みになるわ」
「民達の声が」
「この者達の為にもな」 
「魔界衆を討ち」
「天下を長く泰平にしたい」
「そう思われていますか」
「今特に強くなった」
 その思いがというのだ。
「そうな」
「それでは」
「まずはな」
「御所に赴かれ」
「そこで帝に拝謁してな」
 そのうえでというのだ。
「決まる」
「上様が」
「これまで用意はしておった」
 まさに今日の為にだ。
「そしてそれが成りじゃ」
「遂に」
「わしもその座に就くのじゃ」
「上様が遂に」
「では御所に行くぞ」
 帝のおられるそこにというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「おお、御所に行かれるか」
「ではじゃな」
「織田様も遂にな」
「そうなられるのじゃな」
「嬉しいことじゃ」
「全くじゃな」
 民達も言う、そしてだった。
 信長が御所に入るとだ、近衛が来て笑顔で言って来た。
「よくぞ来られたでおじゃる」
「近衛殿も何もありませんでしたか」
「麿はこの通りでおじゃる」
 微笑んでの言葉だった。
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