12.あの日
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
っと顔がニヨニヨしてるぞ?」
「……ぱーどぅん?」
「わざとらしくパードゥン?じゃないよ! おれが作戦説明してるときもずっと左手気にしてニヤニヤニヤニヤ……見てるこっちが恥ずかしいわ!!」
「ぇえ〜…だって昨日テートクから…うひひひ」
実は、自分の顔がずっと緩んでいたのは自覚していた。どれだけ顔を引き締めても、昨日のことを思い出してしまう。そして左手の指輪の感触を確かめて、それが夢ではないことが実感できると、自然と顔がほころび、自分でも気持ち悪いと思えるほど顔がにやけてしまうのだ。
「テートク……ワタシ、幸せデス……ドュフフフフフ」
「それはおれもだ……」
私は今、自分がそうしようと思わなくても、彼の一挙手一投足を目で追ってしまう。今なら彼のどんなに小さな声も聞き分け、どんなに小さな変化も見極めることが出来るだろう。だから、彼のこの小さなつぶやきが、私にはしっかりと聞こえた。
「んんー? テートクぅ〜今なんて言ったんデース?」
「なんでもないッ!」
「んんん〜? おかしいデース。私には確かにテートクのつぶやきが聞こえたデスヨー?」
「うるさいなー! おれも幸せだって言ったんだよちくしょー!!」
彼は立ち上がり、大声でそう叫んだ。少しからかいすぎたか。ついに五月雨はこらえきれないとばかりに口を隠しながらもブフォッと吹き出し、目に涙を貯めていた。いつもは可憐な五月雨にあるまじき反応だ。
彼は彼で、自分が叫んだ一言に恥ずかしくなったのか、さらに顔を真っ赤にしている。しかしそんな彼と目が合った途端……
「んふふ〜……んふふふふふふふふ……テートクぅ……ニヘラァ」
「んふ……んふふふふふ〜……こんごー……ニヘラァ」
私も彼も、気持ち悪い声を出してニヤケてしまう。我ながら浮かれている。私も彼も浮かれている。それほどまでに昨日の出来事は、私達二人にとって幸せな時間だった。昨日のことを思い出すたび、幸せな気分で胸が一杯になり、心の中が彼でいっぱいになってしまう。
「お二人ともマリッジ・ピンクはその辺にしておいてくださいね。きっとみなさん待ってますよ」
さっきまで呼吸困難になるのではないかと思えるほどに笑っていた五月雨にそう促され、改めて我に返った。確かに私はこれから出撃しなければならない。他のみんなが待っているのに、こんなピンク色の空間を展開している場合ではない。
「そ、ソウデシター…」
「う…失礼した。すまん五月雨…」
「いいえ〜。今日は私、金剛さんの代わりの秘書艦ですから」
大げさな咳払いをしたあと、彼はいつもの顔になり、私をまっすぐ見据えた。そこには先ほどまでのうわついた彼の姿はなく、この鎮守府を預かる、一人の提督の姿があった。
「今回の旗艦は青葉だが、いざ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ