11.小川攻防戦。そして犯罪者・鈴谷。
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結果が二人共濡れネズミだ。なんだかそれがおかしくて、霧島と二人、大笑いしてしまった。
くたびれた私達は、小川に突き出た石に二人並んで腰掛けた。この暑さだ。こうやって待っていればそのうち私達の髪と服も乾くだろう。
「…そう言えば霧島は、今日もその服デスネ?」
「ぁあ、仕方ありません。今はこれしか服がありませんから」
「そういえばそうデシタネ……結局昨日は服を買えなかったし、あとで浴衣を買いに行くデス!!」
「よろしいですか?」
「だって花火大会デスよー? ジャパニーズ花火といえば浴衣だって聞いたネ!!」
「ありがとうございます! では後ほど鈴谷と3人で行きましょう!!」
「おーけー!! かわいい浴衣を着て花火を見るネ!!」
「お姉様はどんな浴衣をお選びになるんですか?」
「私はいいデス。この服を着て花火を見るって、ここに来る前から決めてたネ」
でもせっかくだから……と言おうとして、霧島は口をつぐんだ。この服が、かつて彼が私に似合っていると言ってくれていた服であることを、霧島は知っている。
「……お姉様、司令のことは、まだ……?」
「……ソーリーね……霧島……」
「いえ……私こそすみませんお姉様……」
私と霧島の間に沈黙が訪れた。聞こえるのは、小川のせせらぎと蝉の声だけだ。そのことが余計に、耳に痛く、心に痛い静寂のように感じた。
とてつもなく長く辛い数分の後、霧島が口を開いた。その目は、私のことを優しくいたわり、そして心から心配している目だった。
「お姉様、司令のことはお察しします」
「……」
「そして比叡お姉様と榛名が沈んだあの時、私はその場にはいませんでした。ですから、何があったのか私にはわかりません。でもそのことが、金剛お姉様を今も苦しめているのは知っています」
「……」
「ただ、これだけは言えます。比叡お姉様も榛名も、自分が沈んだせいで金剛お姉様が沈んでいると知ったら……」
「霧島は、あの場にいなかったから、そう言えるんデス……」
―金剛お姉様……私は……
―お姉様……すみません……榛名はここまでです……
「そうかもしれませんお姉様……あの時お姉様をなじってしまった私が言えたことではないのかもしれません」
「……でも霧島の言うとおりだと私も思いマス。だからワタシは、ココに来たネ」
「お姉様……」
その後、私達はお互いの服と髪が乾いたのを見計らって旅館に帰った。この夏の暑さである。意外と早く乾いた気がしたのだが、旅館に戻るとすでに昼食が始まっていた。鈴谷はすでに昼食を食べ始めていた。
「金剛さんも霧島さんもおかえりー!! やっぱ夏はそうめんだよね〜!! 早く食べないと鈴谷ぜんぶ食べちゃうよー!!」
鈴谷のこの屈託のない無邪気な笑顔
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